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2006年6月12日

バイオエタノール計画は65点

 国産のバイオエタノール利用計画が、やっと本決まりになったようだ。2007年からサトウキビを使った沖縄産を先行させ、その後にブラジルや東南アジア産等の輸入ものも導入し、2020年にはガソリンへの混合率を10%に上げたものの供給を始め、30年には全ガソリンを10%の混合率とする考えらしい。技術的にはもっと早期に大幅な導入が可能のはずだが、段階的な方法を採ることにより石油産業への影響を和らげようとしたものだろう。まずは1歩前進だから、100点満点で「65点」ぐらいはつけておこう。

 5月21日の本欄で、沖縄県に「エタノール特区」を設けて、同県産のサトウキビからバイオエタノールを製造して「E3」以上の混合ガソリンを流通させるという経済産業省の計画に触れた。その際、環境省の「エコ燃料利用推進会議」では「2030年までに自動車燃料の10%をエコ燃料にする」計画があって、こちらの方が理にかなっていると述べた。5月19日の『日本経済新聞』がそれを伝えていたからだ。今日(6月12日)の『朝日新聞』は、この件を4段見出しで報じ、環境省の方針として同年までに「使用される自動車のガソリンの全量を、バイオエタノール10%混合(E10)に切り替える」ことが決まったと述べている。沖縄県の“特区”の問題はどうなったのかと思いきや、今年度、沖縄・宮古島で実証実験を始めたことに触れ、「公用車で試験走行し、07年度には、同島のガソリン車すべて(約2万台)をE3化する方針だ」とあるから、沖縄産のサトウキビを使ったエタノール製造事業を(恐らく特区化して)育成し、その後に、エタノールの混合割合を増やしながら全国に及ぼしていく考えだろう。
 
 2つの問題が見える。1つは、これによって京都議定書の約束期間(08~12年)に温室効果ガスの削減が規定通りにできるかどうか。2つ目は、食糧との競合関係をどのように調整するかだ。第1の問題については、上掲の『朝日』の記事は「アジア諸国でのバイオエタノール生産を推進」すると書いてある。つまり、国内の農家にサトウキビやトウモロコシの増産を頼むのでは足りないので、アジア諸国に技術支援・資金援助を行ってそれらの“原料”を生産してもらい、それによって「排出権」を得る考えだろう。2番目の問題については、記事は何も書いてない。最近、トウモロコシを中心にして、世界の穀物市況が値上がりしているのをご存じだろうか。アメリカがバイオエタノールの生産を増やしつつあるため、在庫が減少しているのだ。

 このことは以前(昨年11月30日、今年4月14日)にも書いたが、バイオエタノールの利用は温暖化防止策としては決定的ではなく、“中継ぎ”的な意味しかない。つまり、とりあえず議定書で約束した数字を達成するという意味では効果があっても、それによって本当の温暖化防止になるとは言えない。なぜなら、議定書では発展途上国には排出削減の義務がないし、森林伐採の禁止規定もない。日本は、途上国でサトウキビやトウモロコシの生産を支援すれば「排出権」を得て、議定書の約束を守ることができるかもしれない。しかし、それらの農産物は人間の口に入らずに、(結果的に)自動車の口に入るのである。ということは、人間の食糧のための農産物は、依然としてどこかで育てる必要があり、それをどこかの国が森林伐採によって行わないという保証はないのである。
 
 数字合わせではなく、根本解決へ向うためには、どうしても自然エネルギーや水素の利用に全力で取り組む必要があるのである。
 
谷口 雅宣

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