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2006年5月14日

科学誌の広告

 少し前の話だが、本欄でも時々紹介するイギリスの科学誌『New Scientist』上で、同誌に掲載する広告をめぐって読者との間に論争があった。同誌は、論説や記事などで地球環境保護の重要性を繰り返し主張しているが、その雑誌にガソリンをガブ飲みする自動車の広告を載せるのはオカシイ、という意見が発端だった。
 
 まず、4ページをいっぱいに使ったフルカラーの自動車広告が3月25日号に掲載されたことについて、ロンドン在住のロス・ラッセル氏(Ross Russell)とウィーラル在住のマイク・ウーテン氏(Mike Wootten)が4月8日号で噛みついた。この広告には、排気量3.7リットルのベンツ車、3リットルのスバル車、4.2リットルのレンジ・ローバー車と“環境汚染車”が3台載ったのに比べ、“グリーン”な車はトヨタのプリウス1台だった、とラッセル氏が指摘。「広告主は雑誌の読者の関心度に合わせて広告をするはずだから、この比率は、読者である科学者が3:1の割合で“環境汚染車”を選ぶと考えているのか? それともこの広告は、地球温暖化の危機を叫ぶ雑誌の信頼性を突き崩すための、自動車メーカーの戦術なのか?」と書いた。また、ウーテン氏は「汚染促進車や、さらに汚染を促進する航空機による旅行に対するあなた方の嗜好(広告のこと)をもってしては、世界の政策決定者にお説教などできませんね」と皮肉たっぷりだった。
 
 これに対する雑誌側の説明は、同誌の編集部と広告部の間には「万里の長城」がある--つまり、相互不干渉の原則があるとするものだ。そして、この関係のおかげで、同誌のジャーナリストは理性的な科学研究から記事を書き、論説を書くことができる。だから、読者は二酸化炭素の排出量を増やす製品や技術を買うときには、そういう記事を読んで正しい選択をしてほしい、というものだった。
 
 この答えにカチンと来た読者が何人もいたようだ。同誌は、3週間後の4月29日号で、「第2回戦」として再び読者の反応を取り上げた。そこでは、ロンドンのジャスティン・クラウダー氏(Justin Clouder)が、同誌は「欺瞞的思考」(double-thinking)だと非難し、科学誌の編集部が営業のことを考えないというのはバカげているとし、「編集部は会社の予算審議に参加しないのか?」「社員の雇用や給与についてひと言も言えないのか?」と詰め寄る。そして、「編集部が広告の内容について倫理的責任を放棄するのは非難に値する」と手厳しい。デボン州のダグ・ドゥワイヤー氏(Doug Dwyer)は、「広告主の戦術は、環境に有害な車でも繰り返して広告することにより、社会的に有力な同誌の読者に親しみを感じさせ、毛嫌いを減らすためのものだろう」と考え、もしかしたら、「自動車による大気汚染と地球温暖化の関係が強力に立証されればされるほど、そういう車への広告出稿が増えるのかもしれない」と本気か皮肉かわからないコメントをしている。

 雑誌の編集方針と掲載広告との関係は、難しい問題を含んでいる。通常は、ここで指摘されているように、両者が矛盾しないような広告が望ましいことは言うまでもない。が、広告が集まらない場合は、ある程度の妥協をするのか、それとも妥協せずに取材費や人件費を削減すべきかが問題になる。生長の家の編集物や出版物にも、そういう問題があったし、今もあるかもしれない。例えば、月刊誌に薬の広告を載せるか載せないか? 健康器具はどうか? 健康食品はどうか?……信仰と生活の一致となると、もっと難しいのだが。

谷口 雅宣

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