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2006年5月21日

バイオエタノールは沖縄から?

 地球温暖化対策の“困難”な面を見てきたので、今日は“進展”している面を眺めてみよう。1つは、本欄でも度々取り上げてきた「バイオエタノール」のことである。ブラジルはサトウキビから作るエタノールで世界をリードしているが、日本の沖縄県でも特産のサトウキビからエタノールを開発する「エタノール特区」を実現しようという動きが出ている。ただし、この動きは“上意下達”である点が気になる。政府が、在日米軍再編にともなう沖縄振興策の一つとして、「こういう特区を申請してはどうですか?」と地元に働きかけるというのだ。二階経産相が16日に首相に説明し、首相は具体的検討を指示したと19日の『朝日新聞』が伝えている。「よけいなお世話だ」と言われないことを私は祈る。

 というのは、今日(21日)の『日本経済新聞』に、日米両政府が米軍最新鋭の地対空ミサイル「パトリオット3」(PAC3)を嘉手納基地に配備する方針を固めたと報じていたからだ。ミサイル配備と引き換えに「エタノール特区」を提供しようという考えが、沖縄県民にどう映るかは微妙だ。PAC3の配備は日本初であり、その目的は北朝鮮や中国から飛来する(可能性のある)ミサイルの迎撃ということだから、現在難航中の6ヵ国協議と北朝鮮の動きをにらんだ生々しさを隠せない。私は、ミサイル配備などとからめずに、エタノール生産をどんどん進められるような制度改革を心から望む。
 
 エタノールをガソリンに混ぜて販売することは現在、揮発油等品質管理法で3%までしか認められていない。経産省は、「特区」を設けることで例外的により多くの混合比率を認め、さらに燃料への課税を減免することで、沖縄産のサトウキビの生産と利用を促進させようというのだ。そして、エタノール混合濃度10%ぐらいの燃料に対応できる自動車の開発を自動車メーカーにも働きかけるらしい。そうすれば沖縄内での“地産地消”が実現できるというわけだ。しかし、どうして「沖縄」だけの地産地消なのか、私には分からない。自動車メーカーの立場で考えても、沖縄でしか売れそうもない“特別仕様車”の開発に、積極的になれるかどうか疑わしい。それよりも、日本中で使えるエターノール対応車を早急にメーカーに開発してもらい、沖縄産のバイオエタノールを使う方が、沖縄にとってもより大きな活性化となり、温暖化防止にも役立つと思う。
 
 その点、環境省の方が理にかなった考え方をしている。このほど同省の「エコ燃料利用推進会議」がまとめた計画の中には、2030年までに自動車燃料の10%をエコ燃料にすることが含まれているという。(19日『日経』)「エコ燃料」とは、バイオエタノールとバイオディーゼルのことを指すようだ。バイオディーゼルとは、軽油の代わりに、ナタネ油やヒマワリなどから作る燃料だ。この計画でも、ガソリンとエタノールの比率は「10%」を考えていて、そういう燃料で走る「E10」対応の車の生産を増やす計画らしい。しかし、ブラジルでは現在も、もっと自由な組み合わせの混合燃料で走る自動車が無数に走っているのだから、技術立国の日本が20年後にもブラジルに追いつけないと考えるのは、どこかオカシイ。こういう面でも、何か“および腰”に見える姿勢は残念である。

 そんな悠長なことをしているうちに、日本は技術面でアメリカに引き離されてしまうかもしれない。19日の『日経』夕刊は、GM(ゼネラル・モーターズ)が、エタノール対応車種を現在の9種から来年は14種にまで拡大する方針を発表したと伝えている。日本には事実上、エタノール対応車はないに等しい。が、GMのエタノール対応車は、エタノールの混合比率が85%の「E85」でも走れば、普通のガソリンでも走るのだ。それをこれまで約200万台販売したという。来年のモデルでは、対応車の車種を拡大して約40万台を売る予定だ。それなのに、日本では「E10」しか考えず、目標達成は20年後でもいいという。これはきっと、石油業界などの顔色を見ているからだろう。そういうところが、日本の政策決定のマズイところだと思う。
 
谷口 雅宣

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コメント

副総裁先生

合掌ありがとうございます!
 沖縄教区で青年会活動をさせて頂いております山城和史と申します。
 いつも先生のblogや聖典で、私たちには理解が難しい話を
私たちの為に分かりやすい視点で解説して頂き誠にありがとうございます。

 今日は私が耳にした話(情報)との整合性を確かめたくて投稿させて頂きます。
 実は以前、青年会の全国大会推進用?のウェブサイト(BBS)に2/3付(№11)で私が投稿した話(情報)によりますと

http://hpmboard3.nifty.com/cgi-bin/bbs_by_date.cgi?user_id=AEK02261&page=50&msg_per_page=10&def=10

 既に県内の離島では実証実験が始まっているようです。

 私は既にバイオエタノールは利用準備に入ったとばかり思っていましたが、
先生の御文章(情報)によりますと、
法整備がまだなされていないようですので伊江村では見切り発車をしたのでしょうか?
それとも法律の範囲内(3%)で実験しているのでしょうか?

 バイオマスの話が進んでいるのか、
それともマスコミが基地問題と絡めたいのか
詳しいところはよく分かりませんが
地元(沖縄)ではそれなりに準備は進んでいると思います☆再拝

投稿: 山城和史 | 2006年5月23日 11:27

山城さん、

 情報、ありがとうございます。

>>サトウキビを原料にしたエタノール製造を研究するアサヒビール(東京・池田社長)と九州沖縄農業研究センター(熊本・山川所長)の「伊江島バイオマスアイランド構想」の実証試験プラントがこのほど完成、製造したバイオマスエタノール混合ガソリン(E3)を自動車燃料として利用する実験が31日、スタートした <<

 この文章には「E3」とありますから、ガソリンに対して3%の割合でエタノールを混合したものを使うのだと思います。つまり、「現行の法律の範囲内で」ということでしょう。

投稿: 谷口 | 2006年5月23日 11:37

成る程!(^^;

記事をよく読めば分かることだったんですね。
ご指導ありがとうございます!!
                再拝

投稿: 山城和史 | 2006年5月23日 13:10

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