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2006年5月24日

中国で生分解性プラスチック

 本欄ではここ何日か、温暖化防止にあまり熱心でないと思っていたアメリカでも、バイオエタノールや風力発電の分野では日本を引き離しつつあるという話を書いたが、経済過熱中の中国でも、意識ある人々はこの問題と真面目に取り組んでいることを知った。しかも、その動きが日本の技術から生まれたとしたら、我々も少しは胸を張れるかもしれない。5月23日の『朝日新聞』夕刊は、中国では2003年から、二酸化炭素(CO2)から直接プラスチック等の高分子をつくる技術を実用化していることを伝えている。私はこの分野に関しては全く知識がないが、記事によると、CO2とエポキシドという炭素化合物を亜鉛化合物の触媒で反応させると、プラスチックのような高分子ができるのだという。しかも、このプラスチックは、土中などで微生物に分解される「生分解性」をもっているという。

 この反応は1968年に、東京理科大教授の井上祥平氏と東大新領域創成科学研究科客員教授の鯉沼秀臣氏が発見したが、触媒の効率がよくないため、そのままになっていたという。が、中国の研究者がこの技術に注目し、触媒の効率を10倍に向上させて、2003年から、内モンゴル自治区に年生産量1000トン規模の試験工場をつくって生産を始めたという。そこに隣接するセメント工場から出るCO2を原料にした「生分解性プラスチック」を生産しているのである。通常のプラスチックに比べ、まだ製造コストが高いのが玉に傷だが、将来の必要性を見込んでいるのか、中国では現在、海南島に年1万トン規模の工場も建設中らしい。
 
 生分解性プラスチックは、トウモロコシなどの植物から作られるのが普通だ。かつて本欄では(11月1日)、昨年の愛知万博で使われた“エコ食器”や“腐るゴミ袋”のことを書いたが、これらはそういう植物から作ったものだ。しかし、この方法だと、プラスチックの原料生産のために農地を確保しなければならず、22日の本欄で書いたように、食糧問題や森林破壊につながる可能性が大きい。しかし、CO2から直接プラスチックが製造できるとしたら、火力発電所や油田等から出るCO2を大気中に逃さずに固定する有力な手段になる。こういう点に注目した日本の研究者たちが昨年、この技術実用化のための研究調査会をつくり、中国の技術のさらに10倍の効率を目指しているという。
 
 私がスーパーやコンビニへ行くたびに思うことは、食料品を載せているトレイや、それを覆っているラップが、早く生分解性のものに変わらないかということである。それらの販売店では、トレイのリサイクルをしている店も多いが、リサイクルのためにトラックが走ったり、工場が動いたりするから、それ自体がCO2の発生源となっており、効果は半減している。それよりも、トレイやラップ、そして食品容器には生分解性プラスチックを使うことを義務づけるぐらいの明確な方針を、政府に示してほしいと思う。「コスト高になる」という反対論があるだろうが、CO2の発生が地球全体へのコストであるのに、それを商品の価格の中に入れていない現在の制度に欠陥があるのである。だから、早く環境税や炭素税を導入し、その代わりに法人税や所得税を下げてほしい。地球温暖化時代に相応しい税制改革も、喫緊の課題である。

谷口 雅宣

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コメント

>>トレイやラップ、そして食品容器には生分解性プラスチックを使うことを義務づけるぐらいの明確な方針を、政府に示してほしいと思う。

先生の仰ることに大賛成です。

生分解性プラスチックは汎用プラスチックの3~5倍の値段だそうですが、ここを思い切って価格を逆転させれないものでしょうか?逆転できなくても汎用プラスチックの1割でも2割でも安くする必要があると思います。
そのためにどうするかを為政者は考えていただきたい。

家庭用ソーラ発電でも、20年~30年のスパンでないと採算ベースに合わないのが現状でありますが、10年~15年で元が取れるようでないと、普及は早まらないと思います。

経済性、家計優先に走るのが人の常であると思いますが、「環境はもっと大切である」ということ伝えられる自分でありたいと思っています。

毎日の先生のお教え、しっかりと勉強させていただいています。ありがとうございます。

投稿: 太田高明 | 2006年5月25日 18:42

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