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2006年5月23日

“プランB”は始まっている?

 前回本欄で書ききれなかったことがある。それは、アメリカの“石油中毒”に対するレスター・ブラウン氏の処方箋だ。彼はアメリカに対しては、太陽光発電やバイオマスの利用、小規模水力発電などではなく、風力発電を推薦する。それも何百基単位ではなく、何千基の規模でだ。なぜなら、現在人類がもつ技術の中で、風力発電だけが次の6条件をすべて満たすからだという--①豊富に存在する、②安価である、③使っても減らない、④広範囲で利用できる、⑤クリーン(無公害)である、⑥気候に悪影響を与えない。さらに、①との関連で言えば、アメリカの中西部のノース・ダコタ、カンザス、テキサスの3州だけで、現在のアメリカでの総電力需要を満たすだけの風が吹いているというのだ。

 そして、風力発電機を千基規模でアメリカ中に立て、それらを全国の送電網に連結すれば、風力発電による夜間電力を使って新世代ハイブリッド車(本欄2月3日参照)の蓄電池に充電することで、近距離の自動車用途はすべて風力でまかなわれ、ガソリンの消費量を劇的に(70~80%も!)減らすことができるというのだ。この“プランB”への動きは、どうやらもう始まっているようだ。

 22日付の『日本経済新聞』(夕刊)は、アメリカで風力発電機の設置ラッシュが始まっていると伝えている。それによると、この分野での2006年の設備投資額は前年より3割多く、総額で40億ドルを超えるという。これによって追加される発電量は、約3000メガワットに達する見通しとか。100メガワットが大体2万5000世帯分の電力だから、今年1年で75万世帯分がクリーン電力に移行する計算だ。ブラウン氏は昨日の講演の中で、アメリカでの風力発電装置の主要メーカーはジェネラル・エレクトリック(GE)社だが、生産が注文に間に合わず、今注文すると納期は再来年(2008年)になると言っていた。上記の『日経』の記事では、その生産能力の不足分を狙ってか、海外企業の参入も活発化していると書いている。
 
 ところで、日本のある西太平洋ではすでに台風1号が暴れて消えたが、アメリカ上空を吹く風と言えばハリケーンだ。今年もハリケーン・シーズンが近づいたというので、アメリカ海洋大気局は22日に、今シーズン(6月1日~11月30日)のハリケーン予報を発表した。『日経』の今日の夕刊がそれを伝えているが、同局の発表によると、今年は北大西洋・カリブ海地域では「カテゴリー3」(最大瞬間風速50~58メートル)以上の大型ハリケーンが4~6個発生する見通しだ。昨年は、あの有名な「カトリーナ」や「リタ」を初めとした大型ハリケーンが7個も発生し、アメリカ南部に甚大な被害をもたらしたことは、日本にいる我々の記憶にもまだ新しい。同局の予想では、今年はそれほどではないが、「非常に活発」という。
 
 昨年10月24日の本欄で、アメリカで毎年用意しておく21個分のハリケーンの名前がなくなって、ついに「ハリケーンα」が登場したことを書いた。昨年はだから、北大西洋地域ではハリケーンの「最多」記録が樹立されたのだ。今年は「それほどではない」というのは、多分「数」のことだろう。今日放送されたABCニュースでは、ハリケーンの「強さ」について、これまでの最大級だった「カテゴリー5」(最大瞬間風速が69メートル以上)という分類の上に「カテゴリー6」を作ることも検討されている、とレポーターが伝えていた。そういう巨大化するハリケーンや台風のおかげで、風力発電が活躍するとすれば、人類は「痛しかゆし」である。我々は何度も“痛い目”に遭いながら、学習するほかはないのだろうか?
 
谷口 雅宣

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