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2006年5月28日

じゃんけんロボ、ほしいですか?

 5月25日付の新聞各紙に“じゃんけんロボ”の記事が載った。人間の脳内の信号を読み取って、その人が出す「グー」「チョキ」「パー」と同じものを機械の手が出すのだという。自動車メーカーのホンダと国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府)の共同研究によるもので、医療機器として使われている機能的磁気共鳴断層撮影装置(fMRI)によって脳内の血流量の変化を読み、それを解析して、85%の精度で人間と同じ動作をロボットの手にさせることができたという。

『朝日新聞』には、さらにこうある--「1年以内をめどに、手を動かさなくても念じただけでロボットハンドを操れる技術に発展させ、脳情報の読み取り装置を帽子サイズに小型化した上で、8~10年後の実用化を目指す」。これは素晴らしい技術だ、と私は驚いた反面、恐ろしい技術が開発された、とも思った。「素晴らしい」理由は、明らかだ。この技術により、重度の身体障害者用の様々な支援装置が実現する可能性が大きいからだ。また、28日付の『日本経済新聞』によると、ホンダは歩行型ロボットASIMOと組み合わせた介護ロボットを目指しており、ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパンの川鍋智彦社長によると、「分身として以心伝心で動くロボットになる」という。

 では、「恐ろしい」理由は?--人間の脳の活動を解析して「グー」「チョキ」「パー」のどれが出るのかが直前に分かるならば、それを負かすことは容易だろう。現在の“じゃんけんロボ”は、脳の活動を読み取ってから手の動作の再現までに7秒ほどかかるそうだが、この時間が短縮されれば、人間に絶対負けない“じゃんけんロボ”ができる。この装置をさらに洗練させていけば、現在の“ウソ発見器”など比較にならないほど精巧な“読心ロボット”のようなものも造れるに違いない。今のウソ発見器は、被験者の皮膚の電気抵抗を測って、その人がある言葉を発するときに興奮しているかどうかを判断するという大雑把なものだが、被験者が出す「グー」「チョキ」「パー」の別まで機械で精確に分かるならば、その人の言うことの信憑度が「信頼できる」「やや疑わしい」「相当疑わしい」「まったくのウソ」などと、何段階もの精度で測定できるかもしれない。警察の取調室には欠かせない装置になるだろう。

 裁判所がもしこれを採用すれば、偽証罪の立証に人間は不要となる。そうなってくると、国会への証人喚問や参考人への質疑の際に、この装置を使うべしとの声が上がってこないだろうか? もしそれが実現すれば、離婚訴訟などの民事裁判、企業や学校での内部調査、就職時の面接、入学試験、お見合い……というように用途がエスカレートしていく危険はないだろうか? まぁ、「入試」や「お見合い」などに使われることはすぐにはないだろう。なぜなら、上記のfMRIという装置は、まだトンデモなく高価だからだ。しかし、その他の用途に使われないという保証は、今のところない。

 ところで、fMRIよりも安価な方法で同様のことを行う研究も進んでいるようだ。それは「脳波計」で脳波を測定する方法で、理化学研究所ではこれによって、考えるだけでコンピューター画面のカーソルを左右へ動かす段階まで、研究を進めているという。また、NTTドコモやキャノン、ダイムラー=クライスラー、アメリカのカリフォルニア工科大学などでも、脳内の変化を測定して機器を動かしたり、人間の好みに合わせた製品開発をしようとしているらしい。
 
 科学・技術の発達で生活が「便利になる」ことを疑う余地はない。しかし、便利さの裏側に何があるのかをしっかり考え、用途を規制するための倫理基準をきちんと定めておかなければ、大変な事態を招くことになりかねない。脳の活動を測定する技術は、人間の究極のプライバシーである脳の内部をのぞく技術でもあるのだ。

谷口 雅宣

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