日本の温暖化ガス 3年ぶりに減少
5月26日の『日本経済新聞』の夕刊を見ていて、“ビッグニュース”を危うく見落とすところだった。なぜなら、それは1段という小さな見出しで書かれ、記事はわずか9行だったからだ。内容は次のようなものだ--日本で排出される温室効果ガスの2004年度の総量がこのほど環境省から発表され、3年ぶりに前年比でマイナスの数値になった。しかし、京都議定書の基準年である1990年との比較では、まだ8%上回っている。
地球温暖化防止の運動に取り組んでいる者にとっては、「前年比マイナス」の成果が生まれたことは喜ばしい“ビッグニュース”なのだが、新聞社の判断基準はこの程度で、『日経』以外の新聞ではどうも報道さえしなかったようだ。多分「8%上回っている」という点を厳しく評価したのだろう。
環境省のウェッブサイトには25日発表の詳しいデータが掲載されているが、それによると、2004年の温室効果ガスの排出量はCO2換算で13億5500万トンで、前年より300万トン(0.2%)減った。議定書の基準年である1990年の排出量は12億5500万トンだから、それより約8%上回っている。日本が議定書で約束した削減量は基準年比で「-6%」だから、あと14%の排出削減が必要である。
1990年以降の日本の温室効果ガスの排出量は、途中でバブル崩壊などの影響はあっても徐々に増加している。1993年に一度減少したものの、その後3年連続で増加、97年に再び減少したあと翌年も減少した。しかし、1999~2000年で再び上昇し、2001年にいったん下がったあとは2年連続で上昇していた。今回の13億5500万トンという数字は、1996年のレベル(13億5300万トン)にほぼ等しい。
環境省は、温室効果ガスの排出源別に次の8部門に分けて排出量を出している:①産業、②運輸、③業務その他、④家庭⑤エネルギー転換、⑥工業プロセス、⑦廃棄物、⑧燃料からの漏出。このうち、基準年時から増加しているのは「廃棄物」(59.9%)、「業務その他」(37.9%)、「家庭」(31.5%)、「運輸」(20.3%)、「エネルギー転換」(17.4%)の4部門で、逆に基準年から減少しているものは「工業プロセス」(15.8%)「燃料からの漏出」(4.4%)「産業」(3.4%)の3部門だ。これを見ると、一般消費者の立場でも、家庭生活や交通・運輸、そして廃棄物処理に関して、もっともっと努力しなければならないことが分かると思う。
特に「家庭」部門では、世帯数が基準年に比べて20.5%も増えているうえ、世帯あたりの排出量も同じく8.6%増加している。家庭からの排出の6割を占めているのが電力消費で、これだけで基準年より45.8%増加している点に留意しなければならないだろう。また「運輸」部門では、前年比で0.1%減少したことが特筆に値するが、「貨物」と「旅客」の基準年との比較では、前者が基準年より3.2%減少しているのに対し、後者は基準年比で42.5%も増えている。これは自家用車からの排出量の増加(基準年比52.6%増)が著しいためだ。
我々の日常生活での選択が、地球温暖化防止にとっていかに大切かが分かると思う。
谷口 雅宣
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コメント
合掌
《「家庭」部門では、世帯数が基準年に比べて20.5%も増えているうえ、世帯あたりの排出量も同じく8.6%増加している。家庭からの排出の6割を占めているのが電力消費で、これだけで基準年より45.8%増加している》
家庭の電力消費によるCO2の排出量が45.8%も増えていることに驚きました。
ただ、家庭の給湯のためのCO2の排出量は1,295kg とのことです(CO2冷媒ヒートポンプ給湯器普及促進研究会「資源エネルギー庁省エネルギー対策課課長の私的研究会」)。
給湯のためののCO2発生は、身近であり心がけひとつでも大きな省CO2発生はできると思います。
ひとつは大気温エネルギーを活用したヒートポンプ式給湯器(エコキュート)です。
家庭でのCO2 1,295kg/年 が473kg/年 まで削減できます。
太陽光発電が3kWで 約500kg/年の削減に比べて実に大きな削減方法です。
費用は省CO2比で計算すると太陽光発電に比べて約25%で済みます。器具費と工事費を合わせても80万円程度です。
今ならば財団法人ヒートポンプ・蓄熱センターから補助金も戴ける仕組みになっております。
また、IHクッキングヒーターも使えばオール電化ということで電気料金の5%を安くしてくれる制度もあり、家庭から直接CO2を発生しなくとも良くなっております。
電力会社が色々なマスメディアを活用して宣伝しておりますがほとんどの方に知られておりません。
先ずは出来ることから始めなければならないですね。
感謝
投稿: 佐藤克男 | 2006年5月29日 09:21
合掌
まだまだ家庭に残された課題は大きいのですね、私も主婦として新たなる可能性を探りたいと思います。
佐藤さん、お邪魔してすみません、
温水を循環させる方法は良いらしいですね。
いつも努力されて素晴らしいです。
ですが、私は調理のHI化は今のところ懸念があります。
消費者が、何も知らぬままオール電化を選ばれることを危惧しています。
厳密な意味で、この宇宙に害なるものはないと思いますが、その理由は、
・現時点では、人間の過剰な欲望の道具にされる可能性があること→現代人は食べすぎです!
・昔ながらの火で調理した料理のほうが、健康に良いということが類推されること
・鍋帽子や陰陽調和料理では、ごくわずかな時間しか火を使わずに済むこと(ご飯なら10分)
・炊飯器だと、フッ素加工の釜を使うことになり、マスタークック土鍋などの、塗装されていない土鍋のほうが、釉薬からの毒素の流出もない上、随分おいしく炊けること
などの理由からです。
現代の生活を持続する方法を考えるより、
私たちがいかに欲望満足を基準に生きているかということを
見つめなおすことを始めるほうが、
この世界をよくするきっかけになると思っています。
再拝
投稿: 松尾かおり | 2006年5月29日 10:44
松尾かおり様 はじめまして。
家電店経営の立場からこのような書き込みになることをお許しください。
まずエコキュートですが、ヒートポンプの高効率運転と深夜電力の利用により、ライニングコストを大幅に低減しています。
IHクッキングヒーターは200Vのハイパワーと高い熱効率で、プロも納得の高火力を実現しています。
プロパンガスの約半分の燃費で済むということと、炎が出ないことで何よりも安全であります。
それと平らなトッププレートですから、サッと吹くだけできれいになりますし、夏などは輻射熱がないから涼しく調理できます。
家計の節約だけがエコではありませんが、家計を節約する製品を利用することでエコに通ずることは多くあります。
鉢物の花に水道水で水をやれば楽ですが、流してしまう雨水を利用すれば経済的だけでなく、エコへの関心も高まります。
災害時、最初に困るのが水です。そんな時、トイレに貴重な飲み水を流さなければならなくなります。そんな時に雨水は役立ちます。それにろ過すれば飲み水にも利用できます。
それと生ゴミですが、そのまま土に返せば肥料になりますが、収集日の日に出された大量のゴミは重油で燃して処理されるようです。生ゴミ処理機を利用すれば、それが肥料にもなりますし、収集日に出すにしても7分の1以下の量になります。
私も便利=幸せとは考えていません。
子どもの頃は不便な中で支え合い、協力し合う生活がありました。風呂に入るにも、ぬるければ誰かに追い炊きをしてもらいました。支え合って生きてきたのです。便利の今はどうでしょう。誰に頼まなくても自分で入れるのです。
これは良いことですが、これから失っているものもあると思います。
失礼しました。
投稿: 太田高明 | 2006年5月29日 21:44
命に関わることですので、ご返答させて戴きます。
HIクッキングヒーターから発する電磁波について、
この世界に悪いものは存在しませんので、
将来もっと進歩した時には、ありえるかもしれませんが、(ドイツでセラミック入り鍋が開発された)
電磁波は、現時点では、
発電所の近所の住民に癌の発生率が高かったり、
送電線の下の住民が脳腫瘍にかかる確率が高かったり、
携帯電話の横に置いている柑橘類が酸っぱくなったり(酵素が分解して酸度が増す)
有害ということになっていますね。
火災のおそれがあるお年寄りならいざしらず、
IHクッキングヒーターは、妊婦さんも使用されるのでは?
メリットだけを取り上げて、デメリットを隠蔽するのは、いかがなものでしょう。
生ごみ処理機は、電力を使わないものだって、いくらでもあるではありませんか。(我が家のは手作りです)
菜食では、コンロもお湯でサッとふくだけで新品同様ですよ
製造にかかるCO2の方が多く、壊れるまでにその分をペイできないのなら、
消費者が、環境に優しいといううたい文句にひかれて選ぶと、
それは錯覚となります。
当然、今までの生活水準はそのままです。
佐藤さまは万人向けにと仰いますが、
そういう消費者は、癌になっても、自らの生活を見直そうとはせず、近代的設備の整った病院にかかられるのでしょう。
そして、動物実験を繰り返した薬剤で、治療を受けるのでしょうね。
いつどこで自らをかえりみる機会があるでしょうか。
心がもとなのです。それはいつか誰しも必ず学ばねばならないことです。私たちはそのために生まれてきたのではないですか?
狭き門より入らねばならぬのは、いつの時代も変わりません。
私は機械を排除しようと言っているのではありません、風力のほうが断然効率がいいのです。
お二人さまにはメールまで戴き、大変勉強になりました、ありがとうございます。
投稿: 松尾かおり | 2006年5月30日 15:32