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2006年4月22日

米中首脳会談は“不発”

 中国の胡主席と米ブッシュ大統領の首脳会談のニュースが入ってきたところで、エネルギー問題の側面から、両国の立場を考えてみよう。「平和・環境・資源」という3つの要素の関連がここでも重要なポイントとなる。まず、「資源」の問題だが、1バレル70ドルを超えた原油高騰の中での首脳会談であることに注目しよう。この原油高騰の一因として、ブッシュ大統領は、好景気にわく中国が将来のエネルギー源確保のために石油の入手先を“押さえ込ん”(lock up)でいることに懸念を表明した。この「lock up」という英語は「錠をかける」とも訳せ、「他人が手を出せないように鍵をかけておく」というようなニュアンスのある言葉だ。

 中国の石油消費は、2004年に1日当たり650万バレルとなり、日本を抜いて世界第2位になった。第一位の米の場合は、現在1日当たり2000万バレルの消費だ。今回の首脳会談では、だから世界一の消費国が第2位の消費国に対して「お前のところが世界中の石油を押さえ込んだら、オレの使う分はどうなるんだ?」と懸念を表明したことになる。あまり説得力のある問いかけではないだろう。米エネルギー省は、中国の将来の石油消費は、自動車の急増などによって2025年までには1420万バレルに達すると見ている。(4月20日『ヘラルド・トリビューン』)これに加えて、インド、ロシアなど大国の経済成長を考えると、生産量が頭打ちになっている現在、石油は今後さらなる高騰が予想されるのである。
 
 その中でのイランによる核開発宣言である。中国はイランの石油開発にも深く関わっているから、イランが武力攻撃を受けてイラクの“二の舞”になることには大反対だ。が、かと言って、石油の禁輸措置が発動されるのも困る。ブッシュ大統領はこの会談で、「両国は、イランが核兵器を持つべきでないという共通の目標を持っている」と発言したが、胡主席はこれを肯定も否定もせず、「平和的解決に向けての努力を続けることで、双方が合意した」(4月22日『産経』)と述べるに留まった。では、中国はイランの核兵器開発について賛成なのか、反対なのか? 私は、中国は“様子見”の段階ではないかと思う。そして、イランの核兵器開発にともなうデメリットが、イランからの石油輸入のメリットを上回るようになれば、禁輸措置に賛成するかもしれない。その点で、今回の胡主席の「平和的解決に向けて努力を続ける」という発言は、微妙な表現ながら、将来の禁輸措置(平和的手段)をも視野に入れた態度表明と言えるかもしれない。

 しかし、包括的に言えば、今回の米中首脳会談でエネルギー分野での進展は何もなかった。ということは、今後も中国は従来通りの経済政策を継続し、エネルギーの消費拡大はさらに続くだろう。これが地球環境に有害に働くことは明らかだから、温暖化はさらに進行する。それから、今回の胡首相の態度で明らかになったことは、現在の中国はエネルギー政策を重視し、核拡散問題や人権問題は“二の次”と見なしているらしいことだ。だから、イランやナイジェリア、ベネズエラなど、アメリカにとって“好ましくない国”からも、エネルギーをどんどん輸入するつもりだ。そして、「地球環境問題」は両国の会談の議題にもならなかった。

谷口 雅宣

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