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2006年4月14日

原油高騰で森林減少か?

 産油国イランの核開発問題との関連で、原油の値段がいよいよ高くなってきた。4月13日のロンドン国際石油取引所(IPE)で北海ブレント原油の先物が初めて1バレル=70ドル台に乗った。また米国産WTI原油の先物も昨夏に記録した1バレル=70ドルの水準に近づき、日本の輸入原油の9割を占める中東産も急伸し、基準銘柄であるドバイ原油は昨夏を上回る1バレル=63ドル台に達した。

 これらは実際の需要の拡大というよりは、将来の国際情勢の不安定要因を読んだ投機的取引によるのだろう。また、米国内では暖冬の影響で在庫が増えているにもかかわらず、ガソリンへの精製能力不足が災いして、ガソリン在庫が減少している。市場はこれに神経を尖らせているのだろう。15日の『産経新聞』は、イラクやイランの問題に加え、「石油関連施設への攻撃が続くナイジェリア情勢や、米国のガソリン在庫の減少など原油の需給に影響しかねない問題も少なくないだけに、原油価格の高騰は長期化の様相を帯びそうだ」と予測している。

 原油高騰の影響で日本国内では日本航空と全日空が3月から国際線で航空運賃を値上げしているが、4月から国内線も平均で約4%の値上げをしている。ナフサ、石油製品、ガソリンの値上げも続いている。これに伴い、ブリジストンは2月から主な車両向けタイヤ価格を5~7%上げ、製紙業界でも3月下旬から王子製紙が主な印刷用紙を6~12%値上げした。運輸業界でも値上げ圧力は続いているが、ガソリンから天然ガスへの転換や人件費の切りつめで今のところ値上げをしのいでいるらしい。

 これらの変化は当然、他の分野へも影響する。例えば、洗剤メーカーのライオンは衣料用洗剤の原料の“植物化”を進めていて、15年前には100%が石油原料だったものを昨年3月には75%を植物原料にした。これにより、植物原料の需要が増えることになる。この原料が何であるか知らないが、サトウキビやトウモロコシだとしたら、食品への影響が考えられるだろう。

 実際、原油高にともなって砂糖の値上がりが進んでいるらしい。世界最大の砂糖生産国であるブラジルは、代替燃料としてサトウキビを原料にしたバイオエタノールの生産国であることは、本欄でもすでに書いた。原油の高騰はバイオエタノールの需要拡大となり、エタノールの生産拡大は同じ原料から作られる砂糖の値上がりにつながるのだ。4月7日の『産経新聞』によると、砂糖の原料である粗糖の値段は、ニューヨークの先物価格で昨年4月が1ポンド=8セント程度だったものが、今年に入って2倍以上の1ポイド=19セントにまで上がっているという。東京穀物商品取引所での粗糖の先物価格は、2月に上場来最高値の1トン=5万3900円をつけた。そして、タイや中国ではこれが菓子類や飲料の小売価格の上昇につながっているらしい。
 
 14日の『朝日新聞』は、ブラジル産のバイオエタノールの売り込みで来日中のルイス・フルラン開発産業通商相とのインタビューを掲載している。この記事で気になるのは、「エタノール価格は高騰しませんか?」との質問に対して、同相がこう答えていることだ:
 
「エタノール価格が上昇すればサトウキビの栽培面積が増え、供給が増える。ブラジルはバイオエタノールを増産する方針で、中南米諸国でも今後バイオエタノール向けのサトウキビ栽培が増えるだろう」

 サトウキビの栽培面積を増やすということは当然、アマゾンの熱帯雨林やセラードを切り開いて畑にするということだ。4月9日の『朝日新聞』には、ブラジルの科学者らがアマゾンの環境破壊を予測した研究が紹介されているが、それによると、現在の速さでアマゾンの森林伐採が進めば、2050年までにアマゾンの熱帯雨林の4割に当る200万平方キロが消失する恐れがあるらしい。森林の消失は当然、大気中のCO2の増加につながる。だから、バイオエタノールの利用は、化石燃料の利用よりは優れているが、温暖化防止のためにはあくまで「過渡的な手段」だと言わねばならない。

谷口 雅宣

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コメント

原油の値上がりは太陽電池の値上がりにも繋がっております。太陽電池の主原料は、電子部品のシリコンウェーハやICチップの生産過程でできる二次産品ですが、原油高の影響で今月からメーカーによっては値上がりしております。

太陽光発電もようやく、オール電化と組み合わせることによって採算ベースに乗ったところでの値上がりは、太陽光発電の普及に若干の影響がでるかもしれません。

3kWの太陽光発電で約千坪の森林のCO2吸収に相当する(メーカー試算)と言われており、一軒の家の太陽光発電がおおよそ3kWですから、CO2の環境対策には大きな効果が望めるわけです。

それも、植樹の場合はCO2を沢山吸収する成木になるには最低十年はかかりますが、太陽光発電は稼動したその日から成木並みにCO2を発生しないわけですから、効果が大です。

ただ、太陽電池の値上がりに比べて、ガスや灯油の値上がりの方が格段に大きいために、オール電化と太陽光発電の組み合わせが目をひいているようです。

ガスや灯油や電力料金は必ず値上がりすることが必至ですが、太陽光発電は一度設置したらランニングコストはほとんど「ゼロ」に近く、数十年は使えるということが判ってきたようです。

投稿: 佐藤克男 | 2006年4月16日 00:05

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