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2006年4月19日

大型魚を食べること

 肉食が地球環境に有害だということは私もいろいろの所で話しているが、その大きな理由は家畜の「飼料効率」が悪いからだ。つまり、ウシの体重を1kg増やすのに穀物が7kgも必要で、ブタの場合は3kg、ニワトリは2kg、養殖魚は1.8kg……というように、動物や魚に穀物飼料を与えて肥やし、それを人間が食べるという方法は、地球資源のムダ遣いだ。ところが、この飼料効率の問題以外にも、肉食が地球環境に有害な影響を与える大きな要素がある。それは、①家畜の精肉過程で排出される二酸化炭素(CO2)、②家畜の体内や糞から出るメタンガス等の温室効果ガス、それから魚類の場合は、③漁業用船舶から出るCO2、も勘案しなければならないからだ。そういう意味では、魚介を食べる場合は「遠洋もの」ではなく、できるだけ「近海もの」がベターということになる。このほど『Earth Interactions』という科学誌に採用された論文で、シカゴ大学の2人の研究者がそれを明らかにしている。

 論文を書いたのは、シカゴ大学助教授のギドン・エシェル氏(Gidon Eshel)とパメラ・マーティン氏(Pamela Martin)の2人。それによると、2002年に食料生産に使われたエネルギーの量は、アメリカで使われた化石燃料全体の17%に達するという。そして、これらの化石燃料を燃やすことで、アメリカ人は一人当たり750トンのCO2を排出したことになるという。この排出量だけで、個人が交通のために排出する温室効果ガス全体の約3分の1の量に達するという。両助教授は、これに生きている家畜が排出するメタンや酸化窒素なども加えて、次の5種類の食事を1日 3,774カロリー摂るとして、それぞれの温暖化効果を計算した:①平均的アメリカ食、②牛肉と豚肉食、③シーフード、④家禽食、⑤菜食(卵と牛乳製品を含む)。すると、最もエネルギー効率がよいのは⑤で、次に④、それから①の順となり、②と③はほぼ同レベルで最悪の効率となった。シーフードの成績が悪いのは、イワシなどの近海ものは効率よく獲れても、カジキマグロなどを捕らえるには、遠洋まで長時間かけて行かなければならないからだ。

 こういう話を聞くと、日本人の「マグロ好き」も考えものだと思う。ワールドウォッチ研究所によると、2004年に海洋学者らが出した推計では、マグロ、マカジキ、メカジキ、サメ、オヒョウ、タラなどの大型魚の自然ストックは、少なく見積もってその9割が、過去50年間でとり尽されてしまったという。4月17日の『朝日新聞』(夕刊)は、遠洋マグロ・カツオ漁業者の団体である日本鰹鮪漁協連合会が、3月末に解散したことを伝えている。最盛期の70年代には1千隻を超える漁船を有していたが、現在は約400隻で、これに原油価格の高騰と乱獲による収入源、輸入ものの増加等で活動停止に追いやられたのだそうだ。現在、日本のマグロ市場の6割は輸入もので、台湾や欧州の巻き網漁船が一網打尽の方法で魚を獲っていくという。日本の漁船ははえ縄漁法が多く、太刀打ちできないらしい。

 日本の寿司屋でマグロやカツオなどの大型魚類がさほど値上がりしていないのは、輸入物と養殖ものの大量流入によるのだろう。しかし、どこの国が獲っても、温暖化ガスは排出されている。「大型魚よ、お前もか……」とつい溜息が出てしまう。

谷口 雅宣

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