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2006年4月 4日

鳥インフルエンザは恐くない? (2)

 3月28日の本欄で、現在世界各地で流行中の強毒性の鳥インフルエンザの人間への感染について“楽観論”を紹介した。つまり、これまでの経緯を見ると、鳥から人間への感染率は極めて小さいので、このウイルスが人から人へ感染するタイプに変異するのはきわめて難しい、という考え方である。この楽観論は、主として統計的な見地から導き出されたものだろうが、同じような結論を医学的見地から導き出した研究グループが、それをイギリスの科学誌『Nature』の3月23日号に発表した。研究の要約も入手できる。
 
 この研究グループは、ウィスコンシン-マディソン大学獣医学校のウイルス学者、河岡義裕教授が率いるグループで、強毒性のH5N1型鳥インフルエンザ・ウイルスが感染するためのレセプター(ウイルスの入口)は、人間の場合は呼吸器系の深奥部に多いが、上層部にはめったにないことを、人間の細胞を使った実験によって証明した。インフルエンザ・ウイルスが人から人へ感染するためには、鼻や喉など呼吸器系の上層部の細胞に取りついて増殖し、咳やくしゃみを介して空中に飛散することが効果的だ。しかし現在の鳥インフルエンザ・ウイルスは、呼吸器系の上層部には感染しないから、低い感染率にとどまっているというのだ。したがって、この型のウイルスが人に感染するものとなるためには、相当大きな遺伝的変異が起こらなければならない、と河岡教授は言う。

 もし河岡教授の説が正しければ、動物のインフルエンザ・ウイルスがどのような遺伝子型に変異することが人間にとって危険であるかの知識が得られたことになる。また現在、「タミフル」を大量備蓄するなどして強毒性鳥インフルエンザの感染防止を急いでいる人類には、まだ多少の時間が残されていると言える。さらに、前回紹介したジェレミー・ファラー博士の予測が正しければ、今後の変異で、このウイルスの人から人への感染が容易になったとしても、毒性の減少によって人類への脅威度は大幅に減るかもしれない。
 
 今回は、楽観論中の楽観論を紹介した。
 
 谷口 雅宣

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