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2006年3月 3日

“石油中毒”を克服しよう

 2月3日の本欄で、ブッシュ大統領が一般教書演説の中で「アメリカ人は石油中毒」と言った背景をさぐり、そこには次世代ハイブリッド車の技術開発が進んでいることを述べた。また2月10日では、アメリカの“キリスト教右派”と呼ばれる人々の間にも「環境保護」を真面目に考える人々が増えていることを書いた。石油の高騰が続けば“石油中毒”を克服しようとする人が増えることは当然で、大いに歓迎したい。

 今日(3月3日)の『産経新聞』は、同国の有力情報誌『コンシューマー・レポーツ』が、7日発売の自動車特集号で2006年の総合評価ランキングを発表し、取り扱った10部門のすべてで日本車をトップに選んだことを伝えている。そして同国での2月の新車販売台数を見ると、トヨタ、ホンダ、日産の3社が2月としては過去最高となったのに対し、GMとフォードは前年同月を下回った、とも書いている。長期化している石油高とイラク戦争等が、アメリカ人の行動をジワジワと変え始めているようだ。
 
 そんな中で、同国の政治コラムニスト、トーマス・フリードマン氏(Thomas L. Friedman)は、2日付の『ヘラルド・トリビューン』紙でガソリン税の値上げを主張している。石油高騰の中なのに、ガソリンの値段をさらに1ガロン3.5~4ドル(1リットル92セント~1ドル5セント)の水準まで上げるために、税率を上げろというのである。値上げが望ましい理由は、そこまでガソリンが高くなれば、バイオ燃料を使った次世代の(充電式)ハイブリッド車を消費者が要求するようになるから、という。しかし、昔から相当高率のガソリン税を導入している日本では、現在のガソリンの値段で、すでにフリードマン氏の勧める高額水準に達している。ところが、バイオ燃料にも次世代ハイブリッド車にも、熱心な“お呼び”はかからない。これは、どう考えたらいいのだろう?
 
 フリードマン氏によると、最近のニューヨークタイムズ/CBSニュースによる世論調査では、アメリカ人は「石油中毒は悪い」ということを知っているだけでなく、「正しい文脈の中で」問われれば、ガソリン税の値上げも容認する態度を示したという。同じ調査では、対象となった人の60%(共和党支持者の三分の一を含む)は、ブッシュ大統領の現在のエネルギー危機への対処の仕方に不満であり、87%の対象者は、大統領は自動車メーカーにもっと燃費のいい車の生産を義務づけるべきだ、と答えたという。ところが、単純ストレートに「あなたはガソリン税の値上げに賛成ですか?」と訊くと、85%が「反対」と答え、「賛成」はわずか12%だったそうだ。
 
「正しい文脈の中で」という点が、重要である。「海外の石油への依存度を下げるために」ガソリン税を値上げするのであれば、調査対象者の55%は賛成し、37%は反対だったという。また、「地球温暖化を緩和するため」であれば、59%が賛成し、34%が反対したという。だから、彼はこの2つの目的を明示して今、ガソリン税の値上げを実行すべきだという。彼によると、エネルギー問題は、今や9・11や“テロとの戦争”をも凌駕する戦略的重要問題だという。「環境・資源・平和」の問題は互いに密接につながっている、という私の主張と一致している。

 私はしかし、ブッシュ大統領が本気になってこの問題に取り組むという気がしない。1日に放映されたABCニュースでは、インドを訪問する直前の大統領に同局のキャスター、エリザベス・バーガス氏がインタビューしていたが、大統領はブッシュ家の偉大さを自慢顔で話し、「私の故郷はテキサスだよ」と目を細めていた。そのこと自体は何も問題ないのだが、テキサス州の経済が石油産業で成り立っており、ブッシュ家が“石油王”の家系であることを考えると、「石油から代替エネルギーに乗り換える」政策を彼が本気で遂行するとは思えないのである。もしそれができたならば、彼の名はきっと歴史に残るのだが……。
 
谷口 雅宣

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