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2006年3月17日

拝啓、トヨタ自動車殿 (2)

 前略。このたびは御社の「レクサス・ハイブリッド」の発表を新聞紙上で読ませていただき、再びお便り致します。

 小生は昨年7月27日、御社が高級ブランドとしてレクサスをアメリカから日本へ“逆輸入”するとの発表を聞き、地球温暖化防止の観点から苦言を呈した者です。御社が優秀な環境技術をもちながらも、それをフルに活用するのではなく、利幅が広く、かつ温室効果ガスを多く排出する“高級車”の販売で利益を稼ぎ出す方向に進んでおられることを悲しんだ者です。また、御社誕生の地である日本よりも、アメリカでの成功に熱意を示されていることを寂しく思う者です。

 世界企業である御社が、世界一の市場であるアメリカでの販売を日本より優先することは、経営面から考えればきわめて合理的かもしれません。また、御社は営利企業なのですから、利益が出なければ先行投資ができないことは充分承知しているつもりです。しかし、今回の「レクサスのハイブリッド化」には少なからず驚きました。もともと燃費が悪く、需要もさほどない高級車の燃費を多少改善することと、需要の多い中級車の燃費を改善するのとでは、社会と地球環境に及ぼす影響に大きな違いが出ると思います。前者よりも後者の方が、社会や環境への貢献が大きいことは言うまでもありません。
 
 しかし御社は、そんな配慮とは別の理由から今回の決定をされたのでしょうか? 今日(3月17日)の『産経新聞』の分析では、御社は日本でのレクサスの販売が目標の八割と低迷しているため、ハイブリッド化による「低燃費」をセールスポイントに加えることで、目標達成を図るつもりだというではありませんか。これは本当でしょうか? もし本当なら、「日本でのレクサス販売を成功させる」という意地を通すために、環境技術を無理に使ったように聞こえます。御社の環境技術は人類全体にとって貴重なものですから、意地や見栄のためではなく、最も効率的に地球環境保全に役立つように使っていただきたく思います。私の個人的感想を言わせていただけば、日本には最早いわゆる“高級乗用車”は不要です。
 
 その理由を申し上げます。こんなことは「釈迦に説法」の感がしますが、日米間ではガソリンの販売価格に大きな違いがあるからです。日本のガソリンの値段は、米国の政治コラムニスト、トーマス・フリードマン氏(Thomas L. Friedman)が「アメリカ人が次世代ハイブリッド車を要求するようになる」と言っているほどの高水準に、すでにあります。そして日本での調査によると、昨年来の石油高騰によるガソリンの値上げによって、日本のドライバーの多くは運転を控えるようになっています。これに対し、アメリカでは燃費のいい日本車が売れていることは事実ですが、自動車の運転を控える兆候はまだありません。そんな中で、燃費の悪い“高級乗用車”を日本に投入する意義が一体どこにあるのでしょうか?
 
 御社の製品企画部では、今やGMを抜いて「世界一」になろうとしている自動車会社が、ベンツやBMWに匹敵する“高級乗用車”を製品ラインにもたないことを引け目と感じ、今回の決定をされたのかもしれません。しかし、「一流メーカーは、富裕層の優越感を満たす車種を作らねばならない」という従来の考え方は、地球温暖化時代の“意識ある富裕層”に今後も適用できるものでしょうか? ハリウッドの俳優が御社のプリウスを愛用することで社会に自らをアピールする時代です。外部者の身勝手な要求かもしれませんが、「温暖化防止に真面目に取り組むのが一流メーカーだ」という新しい基準を打ち立てることができるのは、御社をおいてほかにありません。それこそが、本当の意味での「世界一の企業」が示す姿勢ではないでしょうか。
 
 最後になりましたが、前回の手紙の中に不正確な表現があり、結果的に御社の御努力を正しく評価しなかったことをお詫び申し上げます。小生は前回、御社が「プリウス」発売(1997年)以降、「クルーガー」と「ハリアー」のハイブリッド化までの期間(昨年夏まで)、日本において「SUV車にハイブリッドの技術を載せることをされませんでした」と書きましたが、これは必ずしも正確でなかったかもしれません。御社は、プリウス後の2003年に「アルフォード」にハイブリッド版を追加されました。アルフォードは「大型ミニバン」に分類されることがあるので「SUV車」でないと考えたのですが、排気量で比べるとクルーガーとハリアーは“3リットル台”で、アルフォードは“2リットル台”の4WD車です。これをSUV車と見れば、小生の表現は不正確ということになります。
 
 御社におかれては、今後も環境技術をさらに磨き、フルに生かして、温暖化防止に取り組む“先行メーカー”として益々発展されますことを、影ながら期待しています。そして、RAVクラスのハイブリッドSUVを是非、早期に発売してください。

谷口 雅宣

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