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2006年2月17日

中国は民主化しているか?

 1月8日の本欄で、マイクロソフト・ネットワーク(MSN)社やヤフーなどのネット関連大手企業が、中国政府の要望にしたがって自社の顧客の個人情報を教えたり、ブログの閉鎖に協力していることを批判した。そして、「この件では沈黙せずにぜひ何か言ってもらいたい」とブッシュ大統領に訴えた。もちろんこの訴えが届いたとは思わないが、アメリカでもこの件が問題になっていて最近、連邦下院での公聴会にグーグル、ヤフー、MSN、シスコ・システムズの4社の代表が呼ばれて質問攻めにあった。17日の新聞各紙が伝えている。

 MSNが昨年、北京在住の中国人ブロッガーのサイトを閉鎖したことは、前回書いた。ヤフーは中国政府に、中国人ジャーナリストの個人情報を教えたため、その人が逮捕されて10年の禁固刑となった。グーグルは、検索エンジンに入力される単語を規制して、中国政府が好まないサイトを表示させないような措置を採った。この“検索規制語”は「台湾独立」や「ダライ・ラマ」「天安門」「法輪功」など千語近くになるという。同社は、アメリカ国内では、政府の要望を拒否して利用者の個人情報を出さない方針を明確にしているから、なおさら中国での“心変わり”の動機が疑われている。

 中国政府の検閲への協力を批判された4社の言い分は、「それでも、我々が中国国民にサービスを提供しないよりはいい」というものである。MSN社によると、同社が中国でサービスを開始した昨年5月から今日までに、約350万人の中国人がウェッブサイトやブログを開設したという。だから、不幸にも犠牲者が出たとは言え、自分たちのサービス提供によって中国人全体のコミュニケーションの機会は増え、表現の自由は拡大した、というのである。彼らはさらに、インターネットの規制は国家によっても完全にはできないから、必ず抜け穴ができて、それが中国における言論の自由を拡大させるのだという。読者は、こういう説明に納得するだろうか?
 
 ところで、中国の“民主化”というのは、期待できるだろうか? 去る1月24日、中国政府は「悪質な経営」「権限の濫用」などを理由に、人気のあった時事・オピニオン紙『氷点週刊』を閉鎖したが、この処置を批判するとともに、中国国内の報道規制を非難し、言論の自由を訴える声明文が、このほどインターネットを通じて発表されたという。しかも、この手紙を書いたのは中国共産党の長老や高名な学者、有力新聞の元編集者などの古参幹部13人だ。中国政府は、上記の雑誌を閉鎖しただけでなく、他の3つのニュース媒体の編集長などを更迭した。こういう動きが、中国の古参ジャーナリストの反発をかっているのだ。
 
 17日の『産経新聞』はこの声明文の内容を紹介しているが、それを読む限りでは、中国のジャーナリストの考えている「言論の自由」や「国民の知る権利」は、西側のそれとさほど差がないように見える。例えば、次のような箇所がある--

「言論の自由の意義は、固有の文明を守ることではなく、絶えず新しいものを作り出す可能性をもっていることだ。言論弾圧は社会の創造力の発展を著しく阻害する。政府は早く法律を作り、公民の権利を拡大すべきだ。言論の自由を保護し、国家の進歩と社会の健康的な発展を促進すべきである」

 中国社会の“内部矛盾”が透けて見えるような気がする。アメリカのネット企業の中国進出がこの内部矛盾を激化させて社会変革に一役買うのか、それとも中国政府の検閲を強化して言論統制に加担するのか、まだ先は見えていない。
 
谷口 雅宣

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