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2006年2月18日

グリーンランドの氷床

 地球温暖化の“症状”は自然界の様々な角度から観測されているが、グリーンランドを覆う氷の融解は注目しなければならない。1月30~31日の本欄で、NASA(米航空宇宙局)の気象学者が温暖化の深刻さをアメリカ国民に訴えないように“上”から抑えられていると抗議していることを書いたが、この気象学者もグリーンランドの氷床については深刻な認識をもっているようだ。なぜなら、この陸地は「島」のような名前がついていても、メキシコ一国にほぼ匹敵する広さがあり、そこに「氷」の形で蓄えられている水の量は膨大だからだ。科学者によると、ここの氷の厚さは最大で3000メートルといい、これがすべて海に溶け出すと、世界中の海面が7メートル上昇すると言われている。
 
 このグリーンランドの氷が海に流出する量が、ここ10年で2.5倍に増えているとの調査結果が2月17日付のアメリカの科学誌『Science』(vol. 311, no. 5763)に発表された。『朝日新聞』はこれを17日の夕刊で記事にしているが、それによると、1996年にグリーンランドの氷河から大西洋に流れ出た水の量は50立方キロメートルだったのに対し、2005年の流出量は150立方キロと推定される。また、これに降雪量も加えて計算すると、96年の流出量は91立方キロで05年には224立方キロになるという。これは12本ある氷河が海に向って進む速度を人工衛星から観測し、それに基づいて流量を計算した結果だ。
 
 同誌の記事によると、最近の観測で新しく2つのことが分かったという。1つは、グリーンランドの氷河の移動速度がここ5年間で倍になったこと。もう1つは、いくつもの氷棚の崩壊である。グリーンランドの氷河の流れる速度は地球上のどこよりも速いと言われているが、最近の5年間でそれがさらに2倍となり、現在は年間約12キロメートルだという。「氷棚」とは、陸から海へ流れ出た氷河が、溶けずに棚状になって突き出ている部分を言い、グリーンランドの場合は、厚さが数100メートルに達し、棚の長さが数10キロになるものもある。これが崩壊すれば海に流れるから、陸上の氷が海上に移動しやすくなることは容易に想像できるだろう。こうして陸地から海上へ流れ出た氷のおかげで海面上昇が起こる。昨年1年間で世界の海は「3ミリ」上昇したとされているが、このうち0.5ミリ分は、グリーンランドの氷が溶けたため、とこの記事は推定している。

 かつて南極半島の付け根にあった「ラーセンB」という大きな氷棚が崩壊し、私もそのことを取り上げたが、北でも南でも極地の氷は溶け出している。また、昨年9月11日の本欄では、世界中の氷河が退縮していることも書いた。これによって海面上昇が起こっているのだが、最近もう一つ分かってきたことは、世界中の氷が溶け出すことで海水の塩分が薄まると、海流に変化が起こる可能性があるということだ。このことは昨年12月19日の本欄で触れた。暖かいメキシコ湾流の流れが変わると、ヨーロッパや北アメリカが寒気に震えることにもなる。また、地球温暖化により、ハリケーンの大型化や頻繁化の可能性も指摘されている。

 科学的データはこれだけそろっているのだが、人類が化石燃料を燃やし続けるという“悪習慣”は、なかなか止まりそうもない。フィリピン中部レイテ島の地滑りも、森林破壊が関係しているという。人類の悪業の結果は、今年も“天変地異”のような外観を呈しながら我々の前に展開されるのだろうか。
 
谷口 雅宣

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コメント

先にお断りしておきます。私は生長の家の信徒ではありません。
しかし縁有って先生の御著書は平素より数多く拝読させていただいております。
宗教家のほかに科学者と言っていいほどのご見識をもたれ、
医学・生物学・心理学・環境問題等々、加えて日経紙記者のご経験を活かした
サヨの物語も面白く拝読させていただいておりました。
(途中で終わらねばならなかったのは残念でした)    ある種先生のファンだと思っています。

さて、先週でしたかNHKで地球シミュレータと呼ばれるスーパーコンピュータから
地球環境の破壊(異常気象)を捉えた番組が放送されておりました。
先生には地球シミュレータなるスパコンの実力等は既に御存知と思いますが、
地球シミュレータの演算結果を先生はどのようにお考えでしょうか。
もしかしたら放送された以上のdataをお持ちで、コンピュータの演算結果=予言=告知のような切り口で、
「光の泉」3月号の「京都」のようにお示し頂けるなら、非常に説得力あるものになるのではないかと期待しております。
なにか出版社からのメールのようになり申し訳ございません。
機会がありましたらそのような刊行物でお導き頂きますれば幸甚でございます。

投稿: 西村正廣 | 2006年2月25日 22:23

西村さん、

 過分な讃辞、恐れ入ります……。

>> 加えて日経紙記者のご経験を活かした
サヨの物語も面白く拝読させていただいておりました。(途中で終わらねばならなかったのは残念でした)<<

 ということですが、私がいたのは『産経』です。ごく短期でしたが……。それから、サヨの話は一応あれで終ったつもりでしたが。「途中」という印象ですか?

 私はNHKの番組を見なかったのですが、どんな演算結果が出たのですか?

投稿: 谷口 | 2006年2月27日 11:09

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