« 技術と文化のむずかしい関係 | トップページ | サンパウロへ到着 »

2006年1月15日

資源をめぐる対立の構図

 ブラジルのサンパウロで開かれる「世界平和のための生長の家国際教修会」の準備のため、しばらく本欄を休載していた。準備が整ったわけではないが、成田からニューヨーク行きの航空機の中でひと息つけたので、キーボードを叩くことにした。成田空港の待合室にあった英国の『フィナンシャル・タイムズ』に添付された広告を見て、ボーイング社の旅客機にはインターネット接続機能が搭載されつつあることが分かった。そこで待合室のJALのスタッフにそのことを聞くと、「うちではまだサービスは始めていません」という答えだったので、少しガッカリした。飛行中の航空機からインターネットができるようになると、機上の時間の使い方に大きな変化が起こるに違いない。来年は、私もそういう変化に巻き込まれることになるかもしれない。
 
 さて本欄では、これまで石油の話を取り上げてきたので、最近の国際情勢との関係で“続編”を少し書いておこう。1月7日の本欄で、ロシア産の天然ガスをめぐるロシアとウクライナの熾烈な価格交渉について書いた。ロシアが値上げを目的として、ガスの供給を止めてしまったことが問題となり、EU諸国は一斉に反発した。しかし、アメリカはほとんど何も言わなかった。問題は、その理由だ。アメリカのメディアの中には、アメリカはイランの核開発との関係でロシアの助力を得たいから、今回は大目に見たとの見方があった。

 ご承知のように、イランは平和目的のために核開発をすると主張しているのだが、欧米諸国はそれを信じていない。そこで、原子力発電のための核燃料をロシアから入手してはどうか、との提案をしている。イラン国内でそれをやらせると、核兵器の開発につながると考えているからだ。アメリカは、こういうイランへの側面からの働きかけをロシアにやってもらいたい。だから、自分と直接利害関係のないロシア産の石油については、あまり口出ししない方が賢明だと考えている--そういう見方だ。私は、この見方が正しいかどうか分からない。しかし、ウクライナとの石油の値段交渉が妥結した後のロシアは、イランの核開発について明確な反対意見を表明しだしているから、あながち間違った見方ではないのかもしれない。
 
 ところで、このイランの核開発が石油の問題とも結びついているのだ。イランはもちろん産油国である。昨年来の石油の高騰で相当豊かになっているはずだ。だから、それに加えて「原子力発電をする」という理由は、説得力がないと考える国もある。イラン自身は、「減っていく石油に国の将来を委ねることはできない」という理由を挙げて核開発を進めている。そして、国際原子力委員会(IAEA)の査察を自主的に受けてきたのだが、今回それを停止するという強い措置に出た。EUはそれに驚いて、問題の解決を国連安全保障理事会に付託すると言い出したが、イランはひるまない。そのひるまない理由が、石油の高騰であると言われている。
 
 この問題が今回安保理に回されても、イラクの時のように、いきなり軍隊を送るということにはならないだろう。すると、国連の制裁は「禁輸」という形になる可能性が高い。しかし、イランから石油を輸出させないとなると、高値の石油の価格がますます高くなり、石油を大量に使用している先進各国にとっては、相当の負担となる。欧米諸国は、そういうリスクを冒してまで禁輸に踏み込むことはないだろう--イランは、そう読んでいるというのである。ここに、「石油の高騰が産油国の立場を強め、それが先進諸国の態度の硬化を生む」という関係があるのが分かる。産油国は、石油を武器に自国の利益を追求する一方、石油の値段に振り回される消費国は、態度を硬化させて対立する。

「石油ピーク」はまだ来ていないはずなのに、すでに世界はこんな状況にある。「国益」を掲げて有限の資源を得ようとすれば、資源の奪い合いになることは自明である。だから、誰からも奪わない資源やエネルギーの開発と利用を、今こそ全力で進めるべきなのだ。それが、現時点での平和への道と言えるだろう。
 
谷口 雅宣

|

« 技術と文化のむずかしい関係 | トップページ | サンパウロへ到着 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 資源をめぐる対立の構図:

« 技術と文化のむずかしい関係 | トップページ | サンパウロへ到着 »