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2006年1月 8日

アメリカ企業が言論弾圧に協力?

“社会の公器”とは言われても、営利企業としてのジャーナリズムには限界がある--考えてみれば当然のことかもしれないが、その事実をまざまざと見せつけられた思いがする。マイクロソフト・ネットワーク(MSN)社が、自社の通信ネットワークを使っていた中国人ブロッガーのサイトを、中国政府の要請によって閉鎖したのだ。言い換えれば、中国政府に協力して、政府に批判的な言論を展開する中国人の表現の自由を奪ったのである。7~8日付の『ヘラルド朝日』紙が伝えている。

 MSN社を「ジャーナリズム」と呼ぶことには異論があるかもしれないが、ブログやウェッブサイトなど言論活動の場を多数の人々に提供しているのだから、それなりの見識と信念を期待されてしかるべきだ。にもかかわらず、中国での営業拡大を期待して、利用者の自由を制限した。もし私のブログが自民党政治を批判したという理由でプロバイダーから一方的に閉鎖されたら、それは明確な憲法違反だ。MSN社は、自社の利益のためにアメリカ合衆国憲法を踏みにじる行為に出たと言わねばならない。アメリカ国内の事件であれば当然、訴訟されるし、顧客を失うだろう。しかし、中国国内ならばそれをしてもいいということか。同社がもしそう考えたとしたら、その論理はアブグレイブ刑務所やキューバの収容所での拷問や違法行為と同じである。

 閉鎖されたサイトを運営していたのは、アン・チーというペンネームでブログを書いていた30歳の中国人男性で、ニューヨークタイムズ紙の北京支局で調査助手をしていた人である。彼は昨年末、北京新聞の編集者が解雇されたことをブログで取り上げて書いたため、同新聞のジャーナリスト100人以上が12月29日、それに抗議してストライキを起こした。言論の自由が許されていない中国としては、珍しいことだ。が、このことが原因で12月30日に、このブログは突然閉鎖されたという。「私のブログは何の警告もなく削除されたから、ファイルのバックアップを取っておくこともできなかった」と彼は言っている。
 
 シアトル市のMSN社の担当マネージャー、ブルーケ・リチャードソン氏(Brooke Richardson)は、「これは複雑で難しい問題だ。我々は、中国に我々のサービスがないよりもある方がよいと考える」と言ったそうだ。私には苦しい弁解のように聞こえる。この論理でいけば、同じMSN提供のウェッブサイトで私が中国の批判をすると、私のサイトも閉鎖されるのだろうか? 中国で政府の言論弾圧に協力しているアメリカ企業は、MSNだけではない。ヤフーも昨秋、自社のネットワーク上にある中国人ジャーナリストの電子メールの情報を中国政府に漏らしたことで、そのジャーナリストは逮捕・収監された。批判されたヤフーの弁解は「地元の法律には従わねばならない」というものだった。

 ブッシュ大統領は、イラク戦争に関して「自由を守る」とか「アメリカの価値を守る」と言っていたのだから、この件では沈黙せずにぜひ何か言ってもらいたい。
 
 谷口 雅宣
 

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