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2005年12月 7日

オランダ、「水と共存」を決断?

 前日の本欄で、地球温暖化を「不可避だ」と考えて観念し、その中でどう生きるかを考えはじめた国があることを示唆したが、そんな感想をもったのは、6日付の『ヘラルド朝日』で、オランダの洪水対策の変更の記事を読んだからである。「風車」で知られるオランダは、国土の6割以上が、海抜ゼロメートル以下か海面すれすれの地域であることは、よく知られている。これまでは、堤防や岸壁の補強と排水によって国土を浸水から守ってきた国だが、記事によると、最近オランダ政府は、主要な河川沿いの広大な農地や工業用地を買収しつつあり、これらを高潮時の氾濫原に転換することを考えているらしい。これらの土地を守ってきた高い堤防はもっと低くしたり、向きを変更したりし、中には崩されるものもあるという。
 
 河川沿いのこれらの低地は、水が引いている時は農地として使い、また“浮上式”の工場や家屋を建てることが検討されているらしい。また、冬の雨によって河川の水位が上がったときは、低地に洪水を起こさせて水の勢いを和らげることで、堤防の決壊による壊滅的被害を減らす計画という。また、オランダの開発業者は、“水陸両用”の家の販売を始めているらしい。こういう家は、通常は陸に固定されていても、洪水時には浮き上がる構造になっているという。それだけではない。オランダの建築家やエンジニアは、アムステルダム郊外のシフォール国際空港近くに1万2千戸の浮上式住宅を擁するコミュニティーの建設を計画中であるほか、農場や工場、温室、アパートも浮上式のものを考えているという。
 
 こういう“方針転換”に反対がないわけではなく、堤防の補強や排水をやめるわけでもないが、地球温暖化が長期にわたって継続するとの認識から、オランダ政府は単に堤防の増設や高度化では充分な対応ができないとの結論に至ったようだ。オランダでは、北海の冬の嵐や、雪解けにともなうデルタ地帯の氾濫が恒常化しているが、それらへの対策と同様の長期的視点が必要になってきているという。“硬い”コンクリートによるだけでなく、砂丘や湿地、干潟など、“軟らかい”自然の手段も動員しなければ間に合わないということだろう。
 
 ヨーロッパ環境局によると、北部ヨーロッパの降水量は1900年以降、40%も増加しているという。これに加え、温暖化にともなうヨーロッパ・アルプスからの水量の増加を考えると、今後さらに洪水の可能性が増すことは否めない。それと同時に、温暖化は夏場の日射量の増加を引き起こしている。オランダは河川の氾濫を防ぐのに、土を使った堤防を多用しているから、日射量の増加は、堤防のヒビ割れの問題も深刻化させているのである。
 
谷口 雅宣

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