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2005年12月12日

“京都後”も「前向き」で合意

 12月6日の本欄で、モントリオールで開かれていた京都議定書の締約国による第1回会合(COPMOP1)が難航していることに触れたが、11日付の新聞各紙はこの会合での結論を一斉に報道した。が、その内容は「今後も温暖化防止に向って前向きに取り組む」ことが合意できたという程度だ。

 2013年以降の“京都後”の取り組みに、アメリカは最後まで「参加する」と言わなかったし、経済発展目覚しいBRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)も温室効果ガスの削減義務を持たされることに難色を示した。議定書に参加している日本などの先進諸国が“京都後”にどのような削減目標を定めるかについては、来年5月から開かれる特別会合で「13年以降に空白期間が生じないようなるべく早く検討する」とだけ合意した。ただし、京都議定書で運用ルールとして打ち出されていた温室効果ガスの排出権取引などを正式に採択し、議定書の目標が達成できない先進国には罰則を設けることが合意された点は、評価できるだろう。
 
 今問題なのは国益ではなく“地球益”ないしは“世界益”である--そういう議論は、国益と国益がぶつかり合う国際政治の現場では、どこかへ棚上げされてしまうようだ。アメリカは、南部の歴史都市・ニューオールリンズをハリケーンで破壊されていながら、それが温暖化の影響であることに目をつぶり、国益の範囲内でしか物事を考えていないように見える。グローバル時代の超大国がこの状態であることは、まことに嘆かわしい。

 10月24日の本欄で、アメリカを襲うハリケーンの数が増えて、用意しておいた21の名前がなくなってしまったことを書いた。22番目以降は、ギリシャ文字のアルファベット順に名前が付けられるが、この日に「ハリケーンα」が命名されたのだった。が、その後も記録は破られ続けていて、「β(ベータ)」「Γ(ガンマ)」「Δ(デルタ)」が次々に発生し、11月29日には、ついに26番目のハリケーンとなる「Ε」(イプシロン)が誕生している。ハリケーンの発生数は長い間、年平均で「11」だったそうだ。それが今年の予測では「18~21」だとされた。だから「26」は異常に多いのだ。まだ「カトリーナ」のような被害が出ていないから安心しているのだろうか? が、被害が出てからでは遅すぎる。実際、最近の気象関係の変化は過去に例を見ないものが多いのだ。
 
 11月29日付の『NewScientist』のニュースによると、ハリケーン「デルタ」は、大西洋を横断するというきわめて異例なコースをたどり、アフリカ大陸北西端のカナリア諸島を通過してモロッコへ行ったという。また、アメリカの国立ハリケーン・センター(NHC)が今年のハリケーンの大きさを再検討してみたところ、7月に来た「エミリー」は発生当時の「カテゴリー4」の規模ではなく、最大級の「カテゴリー5」だった可能性があることが分かったという。これによって、今年は、最大級のハリケーンが3つ来たことがすでに新記録だったのに、「エミリー」を加えれば明らかに“異例”の年となるのだそうだ。さらに、ハリケーンは通常、海上での発生から上陸まで1週間ほど余裕があるのに、ハリケーン「ウィルマ」は、発生からわずか24時間の早さで最大級の「カテゴリー5」へ成長して上陸した。このような異例な現象はみな「海面水温の上昇」と関係しているらしい。
 
 北大西洋の海流にも変化が起こっているらしい。30日付の同誌のニュースでは、西ヨーロッパの比較的温和な気候が変化しつつあるという。イギリスのサウサンプトンにある国立海洋学センターが昨年、北大西洋の海流を調べたところ、温暖なメキシコ湾流から発してヨーロッパへ近づく海流が、30%ほど減少しているらしい。同センターでは、この変化が一時的なものかどうか分からないとしているが、気になるところだ。メキシコ湾流は、その名の通りメキシコ湾から始まって大西洋をヨーロッパ方面に北上し、北緯40度の当たりで二分するという。一つは海面近くを南へ向い、残りはさらに北上してヨーロッパへ達し、風を暖めることで大陸の気温を5~10℃上げる効果があるという。この海流の量が30%ほど減っているのだそうだ。この減少の大きさには異議を唱える学者もいる。しかし、世界の気象に何か大きな変化が起こっていることは確かなようだ。

 12月になって、日本列島周辺は一気に寒気に包まれている。私は鼻風邪をひいてしまったが、読者の皆さんも充分注意していただきたい。今年は「鳥インフルエンザ」も控えているようだから……。
 
谷口 雅宣

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コメント

“国益”からの脱却はなかなか進んでいないようですね…。「世界は一つ」という真実に早く目覚めてほしいものだと思います。

さて、「鳥インフルエンザ」(あるいは「新型インフルエンザ」)の予防策については、私の勤務先の大学の産業医によるアドバイスとして、以下の6点が挙げられていました:

1.極力、鳥との接触を避ける。
2.うがいや手洗いを励行する。
3.マスクの使用を心がける。
4.過労を避け、睡眠をしっかりとり、規則正しい生活をする。
5.のどの乾燥を防ぐため、夜、暖房をつけたまま寝ないようにする。
6.感染が疑われる場合は、早急に病院で診察を受ける。

この4つ目のアドバイスの中で「過労を避け、睡眠をしっかりとり」という部分は、「肉体が人間である」という前提であまりおおげさに考えてしまうと、労働意欲がそがれてしまうきらいはありますが、その点を除いては、私もこのアドバイスに従って生活するようにしています。

ただ、3つ目の「マスクの着用」は、のどには優しい習慣だということは実感し始めましたが、挨拶をしても私が誰だか分かってもらえないときが結構あるので、「挨拶をするときは素早く外す」ことも、社交上は大変重要なことのようです…。

投稿: 山中 | 2005年12月13日 15:52

 宗教者の方が温暖化問題に関心を持っていただけるのは、心強いことです。
 一つだけ事実関係について指摘させていただきますが、BRICs諸国の中のロシア(と東欧諸国)については京都議定書の中で排出削減目標が掛かっています。一旦目標を受け入れていれば次の期間についても離脱するとは考えにくいと思います。

投稿: SGW | 2005年12月13日 22:21

SGWさん、

 コメントとTB、ありがとうございます。
 あなたのサイトには興味ある情報がいっぱいですね。宗教的な信念を動員しなければ、温暖化の流れは止められない……そう思っています。

投稿: 谷口 | 2005年12月16日 23:05

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