CO2の地下固定に日本企業参加
5月15日の本欄で、「二酸化炭素の地下固定」について書いた。地球温暖化防止のためには、二酸化炭素を排出する化石燃料を燃やさないことが重要だが、いったん排出された二酸化炭素を「地下にもどして固定する」ことで大気中の二酸化炭素を減らす方法がある。石油会社などは、これを実効性のある温暖化防止策と見なしており、すでに北海やアルジェリアのガス田など一部で行われている。その事業に日本企業も参加することになったようだ。
14日付の『朝日新聞』の記事によると、三菱重工は国際石油資本のロイヤル・ダッチ・シェルの子会社と提携して、二酸化炭素を油田に注入して原油の採掘量を増やす事業に参加することを発表した。シェルが採掘権をもつ油田で、三菱重工が二酸化炭素の抽出・圧縮・分離の各施設を建設する案が有力で、年内にも中東で調査活動を始めるという。記事中には「二酸化炭素の地下固定」という言葉は出てこないが、恐らくそれを目指しているのだろう。というのは、原油採掘の際の通常の方法は、地層に水を注入して原油を回収するのだが、今回の事業では水に代えて二酸化炭素を使う。その方が効率が高いらしい。また、京都議定書の規定により、大気中の二酸化炭素を削減した場合には「排出権」が生まれ、それを市場で売買できる。その効果も狙っているに違いない。
しかし、素人考えかもしれないが、「気体を地下に封じ込める」という方法には何となく不安を感じる。というのは、パキスタンやスマトラ沖地震の例などを考えれば、地球表面の地層は永遠に安定しているわけではないからだ。仮に大量の二酸化炭素が「地下固定」できたとしても、大地震などの地殻変動の影響で海中や大気中に漏れ出すことは絶対ない、と言えるのだろうか。もしそんな事態がありえるなら、我々の子孫が高いツケを払うことになる。もっと別の方法--炭素のままで個体や液体中に固定しておく方法--つまり、化石燃料を掘り出さない方法の方が優れているように思うのは、誤解だろうか。
谷口 雅宣
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
谷口雅宣先生へ
昨年暮れだったと思いますが、この技術についての番組がNHKで放映されたのを見ました。
工場の噴煙から「二酸化炭素を分離する技術」とそれを「地下へ貯蔵(固定)する技術」の二つの技術が注目されているようです。
番組では、石炭を採掘し終えた後の炭坑に二酸化炭素を貯蔵する実験の映像を放送していましたが、相当量の二酸化炭素が注入されると地下につながったパイプからは天然ガスが吹き出していました。
私も全くの素人ですが、今までの技術(代替フロンなど)と同様、副作用的現象が起きるのではと思ってしまいました。
投稿: 大平收一 | 2005年12月16日 18:29