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2005年11月 7日

ネズミの愛の歌

 私は「捕獲」と「捕獲2」という短篇小説(日本教文社刊『神を演じる人々』に収録)の中で、ネズミが“声なき声”を発してコミュニケーションをする様子を描いたが、それはまったく想像の産物だった。動物における言語の発達は、発声器官の発達と併行して行われると考えるのが現在の生物学の常識だから、舌や喉の構造が複雑な音の発声に適していない動物が“言葉”や“音楽”をもつことはない、というのがこれまでの常識だった。ところが、科学者の研究でこのほど分かったことは、雄のネズミは雌の注意を引くために、鳥の囀りにも似た複雑なメロディーを発するらしいのである。11月1日発表の『NewScientist』誌の電子版が伝えている。

 長いあいだ実験動物として使われてきたネズミが“求愛の歌”を歌うことがこれまで分からなかったのは、それが人間の耳には聞こえない超音波によるものだからという。ミズリー州セントルイス市にあるワシントン大学医学校の研究者たちは、雌のネズミから採ったフェロモンを嗅がせた雄ネズミの前で録音を試みた。そして、録音されたものをデジタル処理によって、人間の耳に聞こえるように数オクターブ下げて再生してみたという。すると、いくつもの音節パターンからなる楽句やモチーフが聞こえてきたというのだ。その目的はまだ不確かだが、雌の出すフェロモンを嗅いで雄が歌うのだから、“求愛”目的だと考えるのが自然である。
 
 上掲誌のサイトに登録されていた2つの音声ファイル(呼びかけ  と 子守唄) をここに転載したので、興味のある方は聞いてみてほしい。可聴音に変換された後のものだが、鳥の鳴き声とよく似ている。

 鳥が複雑で美しい歌を歌うこと、特にオウムやインコの類で人間の音声を上手にまねること、コウモリも“愛の歌”を発し、クジラやイルカも複雑なパターンで音を発することなどを考えると、人間により近い哺乳動物のネズミが歌を歌うという発見により、「言語は人間の特権」とする従来の考え方は見直しを迫られているようだ。

谷口 雅宣

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コメント

雅宣先生

音声ファイル掲載して下さって、ありがとうございます。
へ~、こんな声なんだと、童話「ねずみの嫁入り」の挿絵をおもい浮かべています。

渕上幸江

投稿: 渕上幸江 | 2005年11月10日 02:43

渕上さん、

 そのうちに、“歌手ネズミ”なんかが現われて人気者になるかもしれませんね (笑)

投稿: 谷口 | 2005年11月10日 23:35

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