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2005年11月26日

石油高騰を嘆くなかれ

 本欄ではしばしば「石油の高騰」の問題を扱ってきたが、これを“よいニュース”として捉える見方もあることを述べた。例えば、9月7日の「石油高騰の“効果”は?」という文章では、「地球温暖化の進行を防止する立場から言えば、石油高騰によって消費が減少し、温室効果ガスの排出量が減少することは“望ましい”ともいえる」と書いた。また、中国や東南アジアの国々の中には、補助金によって石油の値段を不自然に下げる保護政策をとってきた国が多い。このことが環境破壊を助長し、次世代エネルギーの開発や産業の発達を妨げてきた側面がある。こういう国々では石油高騰が国家財政に過大な負担をもたらすため、補助金政策を撤廃する動きが生じている。これも“望ましい”効果と言えるだろう。
 
 9月15日の本欄では、石油高騰によって先進国の自動車産業の構造が変化しつつあることを報告した。主力車のガソリンの燃費の良し悪しによって、自動車会社の販売実績に大きな違いが生じてきているからだ。燃費の良い日本車はよく売れ、燃費の悪いSUV等の売り上げはガタ落ちした。このため、世界各国の自動車会社では、日本発のハイブリッド技術を本格的に採用する計画を次々に打ち出している。そして、日本国内では「レジ袋の有料化」が真面目に検討され始めた。私は大いに賛成であり、わが家では原則的にレジ袋は使っていない。この袋は、石油から作るからマズイだけでなく、腐らないから、廃棄後に環境に悪影響を与えているのだ。
 
 レジ袋だけでなく、石油から作られるプラスチックの皮膜は、食品の販売時など様々な場面で利用されてきたが、「石油の高騰」のおかげで、土の中で腐る生分解性のプラスチックを原料とした食品用シートなどが競争力をもってきているという。生分解性プラスチックの食器については11月1日の本欄で少し触れた。しかし、これは「愛知万博」という限られた場所、限られた時期での使用例だ。これに対し、大手食品加工会社や大規模販売店でも生分解プラスチック製品を採用する動きが広がっているらしい。11月23日付の『ヘラルド朝日』紙が伝えている。
 
 同紙によると、今年になってアメリカ最大の小売店「ウォールマート」を初め「ワイルドオーツマーケット」その他の小売店、食品会社では「デルモンテ」や「ニューマンズ・オウン・オーガニックス」などが生鮮食料品の包装材にトウモロコシを原料とする生分解性プラスチックを一部使用することに踏み切った。そのおかげで、同プラスチック・メーカーのネーチャーワークス社(NatureWorks)の今年前半の売り上げは、前年対比で200%伸びたという。こういう動きの背景には、石油の値段の高騰だけでなく、一般消費者の地球温暖化の進行への危機感や環境意識の向上があるに違いない。今や「環境にやさしい」というイメージは、製品やサービスのセールスポイントになりえるから、ゼネラル・エレクトリック社やシェブロン、ゴールドマン・サックス、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)などの大企業も、“環境分野”でのサービスや商品開発に力を入れ始めているそうだ。
 
 例えば、P&Gでは洗剤「タイド」やシャンプー「ヘッド・アンド・ショルダー」の成分の一部を石油製品から植物油に切り替え始めている。ゴールドマン・サックスは22日に、総合的な環境方針を発表して“グリーン企業”の仲間入りをした。また、新規企業の参入の動きも無視できない。コーネル大学理工学部では、今後3年以内に、バクテリアを使って下水処理場からエネルギーを得る過程の商業化を計画している。ニューヨーク州オンタリオ市にあるベンチャー企業「ノーザン・バイオディーゼル」は最近、食料油と生ゴミからディーゼル油を再生する工場を建設する資金を調達した。数年前には、銀行はこの種の計画をバカにしていたそうだが、世の中の潮流が変わりつつあるようだ。

 京都議定書を無視したアメリカ国内においてさえ、上のような動きである。日本国内の動きについては、毎日の新聞紙上でおなじみの通りだ。ただ問題は、このような先進国による化石燃料の使用を減らす動き(A)に対して、BRICs諸国などによる化石燃料の使用の増加(B)が、どのような関係にあるかということだ。「A>B」ならば有効だが、「A<B」ならば今後も温暖化は続くだろう。
 
谷口 雅宣

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コメント

私が週に一、二度買い物に行く有機栽培のチェーン店(Whole Foods)では私が買い物袋を持っていくので、ひとつの袋につき5セントのクレジットをくれます。その理由かどうかは知りませんが、レジに並んでいると、私以外にも時折自分の袋を持って買い物に来ている人をみかけます。そういう行為を行う人がもっと増えるよう願っています。

川上 真理雄 拝

投稿: mario kawakami | 2005年11月27日 00:10

川上さん、

 夏にNYへ行ったとき、確かWhole Foods の店へ行きました。セントラルパークのすぐ前でした。でも、レジ袋なしのクレジットのこと、知りませんでした。これから注意します。

投稿: 谷口 | 2005年11月28日 23:29

 5月に今の寮に引っ越したのですが、環境に配慮したクリーニング店をしばらく探しました。針金ハンガーを使用しているクリーニング店が多く、その場合は針金ハンガーは回収してくれませんので結局ごみとなってしまいます。しかし、たまたま通った道に、ハンガー(プラスチック製)を回収してしている店を見つけました。
 クリーニングを受取にいった時には、大きなビニール袋に背広等を入れてくれるのですが、生長の家青年会ではレジ袋削減運動を行っていますので断っていました。すると、その力かどうかわからないのですが、11月初旬頃から「NO!Bagスタンプカード」というカードが配られ、袋を断るとスタンプを一つ押してくれるようになりました。30個たまると300円分の利用券になります。
 レジ袋削減の輪が広がることに、とても喜びを感じました。

投稿: 田中道浩 | 2005年11月29日 13:00

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