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2005年11月18日

イラク戦争は間違っていた?

 イラク戦争開始をめぐるアメリカ国民の疑念がどんどん拡大している。今朝、NHKの衛星放送で流された米ABCニュースは、イラク戦争開始に際し、ブッシュ政権が情報操作を行ったと批判した上院議員に対して、チェイニー副大統領が「この町(ワシントン)で流された最も不正直で非難されるべき攻撃の一つだ」と声を荒げる様子を大きく映し出した。アジアを訪問中のブッシュ大統領も、記者会見でイラク戦争への反対意見の増大を尋ねられると、「戦争を政治に利用することは無責任だ!」との発言を繰り返していた。開戦時の情報操作だけでなく、開戦後の捕虜虐待や汚職などのスキャンダルが次々と明るみに出てきている昨今、ブッシュ政権はもっぱら守勢に回っている感がする。
 
 そんな時に、アメリカの指導者層の大半は、今や「イラク戦争は間違っていた」と考えるにいたっているとの世論調査の結果が発表された。プー調査センター(Pew Research Center)による調査を『ヘラルド朝日』紙が11月18日付で伝えた。
 
 それによると、一般国民の間ではイラクへの武力行使の決定を「正しかった」と考える人は48%で、「間違っていた」と考える人(45%)より多い。しかし、①軍関係者、②州や地方政府の役人、③ニュースメディア、④治安関係者、⑤宗教指導者、⑥外交関係者、⑦学者や研究機関、⑧科学者とエンジニアの8つの範疇に入る人々は、この番号が大きくなるにしたがって「イラク戦は間違っていた」という意見が増加していくというのだ。実際の数値を並べると--①47%、②59%、③71%、④72%、⑤72%、⑥77%、⑦78%、⑧88%、である。また、アメリカは以前に比べて国際的尊敬を得られなくなっていると考える人は、全体の三分の二いて、その理由がイラク戦争にあると考える人は、一般国民では77%、指導者層では88%であるとの結果も出た。
 
 この調査は、一般国民の2006人と指導者層の520人を対象にして、今年の9月5日から10月31日までに行われたもの。調査の全結果は、このサイトで見られる。

 本欄と長く付き合ってくださっている読者ならご存知だが、私はこの戦争にずっと批判的である。戦争そのものを人間の「迷いと迷いのぶつかり合い」だと考える宗教的立場からは、当然そうなる。しかし、9・11を経験したアメリカ人が、何かを“敵”と見定めて報復行動をとらなければおさまらないという心情は、マンハッタンでの生活経験のある私には充分理解できる。問題は、ぶつかり合っている“迷い”がどういう迷いであるかが、混沌として判別しがたい状態にあることだろう。この戦争は、様々な原因がからみ合って起こっていると思うが、その中で無視できないのは「石油をめぐる利権」と「パレスチナ国家」の問題である。表面的には宗教上の信念の衝突のように見えているかもしれないが、この2つの問題が存在しなかったならば戦争までする必要はなかっただろう。そして今、この2つの問題が解決したならば、戦争は急速に終息するだろう。もちろん、この2つの問題は政治問題である。
 
 もう宗教を政治に利用することはやめようではないか。
 
谷口 雅宣、

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