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2005年11月20日

タミフルの副作用

 鳥インフルエンザ・ウイルスの変異による人間への感染と大流行の可能性について世界中が対策に追われている中で、治療薬として有望視されている「タミフル」の子供への副作用の問題が浮上してきた。アメリカの食品医薬品局(FDA)が17日にまとめた報告書には、日本での死亡例が大きく取り上げられたが、薬の服用と死亡との間の因果関係については「現時点では因果関係があると結論付けることはできない」との見解が示されているという。19日付の『産経新聞』が伝えている。
 
 しかし、死亡例のすべてが日本人であり、死亡しなくとも異常行動や幻覚、意識障害などがあったというのは気になるところだ。記事によると、厚労省は昨年6月に出した医療品・医療用具等安全情報の中で、タミフルの重大な副作用として精神・神経症状を挙げているというから、因果関係を認めているのかと思った。しかし、記事に載っている同省の安全対策課長の話では「厚労省としても、タミフルの安全に重大な懸念があるとは認識していない」という。これは分かりにくい言い方だ。結局、薬の服用と精神・神経症状の間には因果関係はあっても、そういう症状と死亡との間に因果関係があるとは言えない、ということだろう。言い方を変えれば、薬の副作用で神経障害が起こることがあっても、それが必ず自殺を惹き起こすとは言えず、したがって「重大な懸念」はないということか。
 
 日本人の死亡例が多いことの理由については、19~20日付の『ヘラルド朝日』紙の分析が参考になる。その原因の一つは、世界でのタミフルの使用のほとんどは日本国内だからかもしれないという。同紙によると、これまで未成年者に出されたタミフルの1300万回の処方のうち、実に1160万回(89%)が日本で行われているというのだ。日本でこれほど使われている薬だから、ごく稀に副作用があるとしても、それは最初日本に出るというわけだ。また、もう一つの可能性としては、日本の医師は、インフルエンザ患者を診察する際、インフルエンザそのものの影響で起こる脳の異常によく気がつく傾向があるのだという。そういう患者が(処方が頻繁に行われているから)たまたまタミフルを服用していることがあり、そういう場合には、実際は副作用でなくても副作用のように見えるというわけだ。これに対する製薬会社の言い分は、これまでに子供の死亡が起こった確率を計算すると100万回に1回であり、この率なら薬を服用しないで子供が死ぬ確率より高くないから、特に心配することはないのだそうだ。
 
 「タミフル」は商品名だが、一般の名前は「リン酸オセルタミビル」といい、1996年にアメリカで開発され、大手製薬会社「ロシュ」が99年から発売。日本では中外製薬が01年から輸入・販売しているそうだ。この薬はウイルスの表面にある蛋白質に作用して、細胞内で増えたウイルスが外へ出るのを妨げる働きをするらしい。ウイルスは、それ自身では生存できないが、細胞の中へ入り込んで寄生生活をするものだから、細胞の外へ出られなくなれば増殖が止まることになる。発症後48時間以内に服用を始めれば、ウイルスの増殖を抑えて症状が緩和することが期待されている。

 私は、今回の鳥インフルエンザとの関連で初めて「タミフル」という薬の名前を耳にした。が、上に書いたような日本での使用の多さを考えると、この薬を服用したことのある人はきっと多いに違いない。日本人(あるいは日本人医師)が、それほど薬好きであるとは知らなかったので驚いた。日本列島はこれから本格的な冬に入るが、渡り鳥が来るのはいいが、鳥のウイルスが人間への感染力をもたないことを願うものである。

谷口 雅宣

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コメント

タミフルの副作用は気になります。A型の特効薬とされています。小児には飲ませたくありませんが、医師は処方します。2年前下の子(当時2歳)がインフルエンザで入院したことがあり、タミフルを出されました。一回分は飲みましたが、二回目からなぜか息子は頑として飲みませんでした。熱はすでに下がっていた状態で入院でしたのでタミフルの服用はあきらめ、点滴だけでした。確かタミフルのような抗ウィルス剤は発病後、48時間以内に飲めば効くと聞いております。その後、新聞記事で、乳児の場合、薬が脳に残ることがあるのでタミフルを控えた方がいいと出ていて、ぞっとしたのを記憶しております。当時小4だった息子も下の子と前後して帰省中に高熱を出し、救急にかかったものの、インフルエンザとは診断されず、キットで検査もせず、薬をもらって帰宅しました。ところが帰宅後、高熱にうなされてちょっと目を離したすきに家を飛び出して、裸足のまま駅まで走ってバスに乗ってしまったのです。私は下の子を病院に連れて行っていたので知らず、実家の父が探し回って無事見つかりました。息子の話では幻覚があったようです。もちろん、タミフルなど出されていません。
後日かかりつけ医に尋ねると「インフルエンザであった可能性が高く、インフルエンザによる熱せんもうではないか」とのことでした。厚生労働省が出している『「インフルエンザ脳症」の手引き』というパンフレットをもらいました。インフルエンザ脳症の初期症状と熱せんもうは区別がつきにくいとのことです。また、ある種の解熱剤でもおかしな症状が出るらしいです。ですからアメリカの報告の中で、脳症で亡くなったのか、タミフルの副作用で亡くなったのか、あるいは別な原因なのか判断がつきにくいとのことでしょう。タミフルは異例の早さで新薬として認可されているので、作用はまだまだ未知数だと思います。

こんな経験をしてもわが家はインフルエンザの予防接種を受ける気になれません。息子が入院した病院の医者に「なんで予防接種を受けないの!」と怒られてしまいました。でもかかりつけの先生は「インフルエンザの予防接種を受ければインフルエンザにかかっても軽く済むという医学論文はありません」とはっきりおっしゃっていました。麻疹等の予防接種とは異なるようです。

投稿: 石光淑恵 | 2005年11月22日 11:00

石光さん、

 大変興味ある実話を聞かせてくださり、ありがとうございます。

 そうですか、インフルエンザで“異常行動”が出ることが実際にあるのですね。私は、ここ何十年もインフルエンザの予防接種など受けていません。子供も(もう大人になりましたが)、受けたとは聞いていません。

 しかし、昨今のニュースは何か空恐ろしいですね。

投稿: 谷口 | 2005年11月23日 22:59

@niftyのニュース速報に、またもや「タミフル服用後の死亡例」を厚生労働省が公表したことが報じられていました:

http://newsflash.nifty.com/news/tk/tk__yomiuri_20051215i212.htm

このニュースによると、他の薬による副作用の可能性もあり、同省は「タミフルの安全性に重大な懸念があるとは考えていない」と説明しているそうです。

しかし…やはりこの種のニュースに接すると、タミフルを服用する気にはなれません。もっとも、この場合の問題の本質は、タミフルだけではなく、「薬そのものの服用のしすぎ」にあるのかもしれませんが…。

奈良教区 山中優 拝

投稿: 山中優 | 2005年12月15日 22:47

うちの11歳の息子も、高熱の時必ず熱せんもう状態になり、夜中すぐ病院に駆け込むべきかなやみます。朝になると、治まりますがやはり怖いです。危険な状態かどうか見分ける事は出来ないのでしょうか・・・

投稿: 嶋あゆみ | 2006年1月 6日 13:43

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