食器をどうする?
地球環境をテーマにした愛知万博にはぜひ行きたかったが、諸般の事情から行けなかった。昼のNHKの実況放送でわずかにその雰囲気を知っただけだが、「待ち時間が長い」ことを伝えていたから、無理して行ったとしてもパビリオンの前で待つばかりで、中をじっくり見学することはできなかったろう。会場には、弁当等の食事が持込み禁止だとの話も聞いていたが、その理由もつい最近まで知らなかった。会場では“エコ食器”が使われていたのである。食事の持込みを許すと、弁当ガラなどの廃棄物が大量に発生するから、それを防ぐためだったのだろう。10月30日の『朝日新聞』で、その効果のことを「CO2削減720㌧=杉10万本分」という見出しをつけて報じていた。
“エコ食器”という表現が正しいかどうか知らないが、記事には「生分解性プラスチックの食器」と書いてある。普通のプラスチックは土中に埋めても腐らないが、このプラスチックは土中で分解し、堆肥になるらしい。愛知万博では、食器だけでなくゴミ袋にもこの生分解性プラスチック製のものを使ったという。食器には、トウモロコシなどを原料としたコップや皿など約2千万個を使い、ゴミ袋は約55万枚を使ったらしい。この“エコ食器”には使い捨てのものと回収して繰り返して使うものの2種類があり、使用後は、食べ残しなどの生ゴミやゴミ袋と一緒に破砕して堆肥にして、長野県の畑で利用したという。この畑ではハクサイが育ち、9月上旬に収穫した約300個が来場者に配られたそうだ。これによって(部分的にではあるが)「トウモロコシ→食器・ゴミ袋→堆肥→ハクサイ」という資源の循環が実現したのである。
これまでは「石油→食器・ゴミ袋→CO2・熱・廃棄物」という形で資源が使われてきたため、地球温暖化が進行したが、上記のような資源リサイクルが実現すれば、万博のような大きな催し物を開催しても、温暖化の進行も以前のようには進まないということだろう。記事の見出しに使われた「CO2削減720㌧」という数字は、これらの“エコ食器”や“腐るゴミ袋”を使わずに通常のものを使い、残飯などの生ゴミと一緒に焼却処理した場合に発生するCO2の量との差である。
同じ30日の『朝日』には、早稲田大学の学生と地元の弁当店や飲食店計5店が協力して、弁当ガラの出ない“リユース弁当箱”(弁当箱を繰り返して使うこと)の実験を始めたことが書かれていた。同大の西早稲田キャンパスには約3万人の学生が通い、プラスチックなどの資源ゴミが1日に約200キロも出るという。そのほとんどが弁当ガラで、概算では1日に9千個分が捨てられるらしい。この状況を改善しようという学生たちが「早稲田大学リユース弁当容器普及啓発委員会」を結成して、仕出し弁当用のプラスチックの弁当箱とサンドイッチ用バスケット80食分の回収と再使用の実験をしているらしい。期間は10月11日から11月6日の約1ヵ月間だ。
こういう話を聞くと、生長の家の様々な行事で使われる食器はどうなっているのか、と考えてしまう。ISO-14001を取得した教化部や道場では問題はないのだろうが、大勢が集まる講習会や教区大会での弁当のことが気になる。生長の家の講習会では、多いところでは1万人以上の人が集まる。そこで使用する電力は“グリーン電力”を採用しているが、弁当の選定等についての事情は定かでない。環境保全のためにやるべきことは、まだまだ多いようだ。
谷口 雅宣
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コメント
倉山さん、
“環境博覧会”には違いないと思いますが、環境対策の気運を盛り上げるという意味では、やって悪かったということにはならない、などと感じています。しかし、あういう巨大イベントを行うこと自体が「温暖化」を加速させていることには違いがないでしょう。
この辺のところが、環境保全の啓蒙運動の難しいところではないでしょうか?
投稿: 谷口 | 2005年11月 7日 12:50