水道水だってウマイ?
8月4日付の本欄で、ペットボトルで売っているミネラルウォーターが環境によくないという話を書いた。容器が石油から作られるというだけでなく、金余りの先進国の人々のために(これまた石油を使って)遠方へ送っているのが現状だからだ。私は、日本のように水が豊富と思われる国でミネラルウォーターがこんなに売れるのは、自治体が提供する水道水がマズイからだと思っていた。しかし今日(10月28日)の『産経新聞』に、ペットボトルに水道水を入れて売っている自治体があると書いてあった。しかも、「おいしい」という評判のものもあるという。
「まさか東京の水は……」と考えたが、その「まさか」が的中した。ただし、普通に蛇口をひねって出てくる水とは違い、葛飾区の金町浄水場で作った水だ。それが「東京水」というブランド名でペットボトル入り500mlが100円で都庁の売店で売られているそうだ。「おいしい」という評判で、すでに2万本近く売れたという。金町浄水場では、通常の塩素による殺菌をした後に、活性炭とオゾンを使った「高度浄化処理」をしてアンモニアをほぼ100%除去する。それがおいしさの秘密だそうだ。都水道局の話では、現在の水道水は、この「東京水」と通常処理した水の混合物だが、あと10年以内にすべてが「東京水」になるという。
これに対して、横浜市水道局が販売するペットボトル入り飲料水「はまっ子どうし」は、同市の水源地の一つである山梨県の道志川から採ったもの。これを塩素を使わずに数日かけて濾過し、加熱殺菌してペットボトルに入れた。「東京水」と同じ値段で2年前から発売し、すでに24万本以上を売っているという。市内では自動販売機でも買え、10月からは市内のコンビニでも売り出したそうだから、今度横浜へ行ったときに飲んでみようと思う。このほか、四日市市はこの7月から「泗水の里」という名前で、水道水と同じ水源の井戸水をペットボトル入り500mlを75円で売り出している。こちらは「水道水」というよりは「ミネラルウォーター」だ。同様のものは、前橋市、出雲市、岡山市でも販売しているらしい。
こういうことを考えると、ペットボトルの水が売れるのは結局、その中身が水道よりおいしいというよりは、「ペットボトル」という容器の扱いやすさと、デザインによるところが大きいことが分かる。日本全国にはまだまだ「おいしい水」があるのだから、このペットボトルを化石燃料以外のものから作ることができれば、かなり問題は軽減するのではないか。そういう容器が出るまでは、私は今のところ、同じペットボトルを何回も利用しながら、自宅の浄水器の水を飲み続けようと思う。
谷口 雅宣
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