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2005年10月16日

天災はなぜ起こる

 茨城県つくば市で行われた生長の家講習会で、受講者からの質問にこういうものがあった--「最近、地球規模の天災・人災(ハリケーン、地震)etc について詳しくお教え下さい。人間神の子とはどうしたらいいのか etc?」。ちょっと舌足らずの文章だが、趣旨はだいたい想像できる。質問用紙には、このほか「東京・世田谷」という文字と女性の名前が書いてあった。私は、この質問を次のような意味だと解釈した--「最近、地球規模と言えるほど大きな天災や、人災とも言えるハリケーンや地震の被害が起こりますが、その理由をお教え下さい。“人間・神の子”の信仰をもつとは、こういう場合どう考え、どう行動したらいいのでしょうか?」。そして大略、次のように答えたと記憶している。

 まず、地震や天災の起こる「時間軸」のスケールが、人間と地球とでは相当異なるという点を指摘した。言い直すと、人間は生活の中で時間を考えるときには1年とか2年を単位として、せいぜい10~20年先のことまでしか考えないが、地殻変動は100年、1000年、1万年という長い時間の中で普通に起こるものである。この時間軸のスケールの差が、地球にとっては「自然な」現象である大地震等の地殻変動を、人間にとっては突発的な「異常」現象や「災難」のように感じさせる。地球上のどの地点で地震が起こりやすいかは、すでに科学者によって以前から指摘されている。しかし、人間の方では「もう10年も何も起こっていないから」とか「他の人も大勢、家を建てているから」などという、人間中心の短期的視点で土地の購入や開発の決定をくだしてきた。
 
 例えば、スマトラ沖地震とその後の大津波で災害が大きくなった原因の1つは、このような短期的視点にもとづき、人間が沖合いのサンゴ礁や沿岸のマングローブの林を破壊して、外国人目当てのリゾートホテル等の施設を次々と海岸近くに建設していったことが指摘されている。サンゴ礁やマングローブは津波を防ぐ天然の防波堤の役割をしてきたのに、である。また、アメリカ南部のニューオーリンズの町でも、ここが海抜ゼロメートル以下であり、大きなハリケーンが来れば浸水や水没の危険があることは、専門家によって昔から繰り返し指摘されてきたにもかかわらず、「これまで深刻な被害がなかった」というような短期的な見方が優勢を占めたために、真剣な対策は講じられず、ついに惨事が起こるべくして起こったと言える。

 また、このハリケーン「カトリーナ」の襲来前後に報道されたアメリカのABCニュースでは、南カリフォルニアのあるリゾート地域が暴風雨の襲来によって大きな被害を受けたことに関連して、この地域が砂地で地盤が弱い「危険地域」であることを知りながら、これまで多くの家が海岸線に建てられてきたことを伝え、その理由は「ここは絶景だから」だと解説していた。このような例では、一見「天災」のように見える事柄も「人災」の要素を多く含んでいることがよく分かる。

「天災」が起こることと関連してもう一つ、私が講習会の話で触れたことに「人間の活動」がある。これは、人間の活動によって地球温暖化が起こるという事実を考えれば理解しやすいだろう。この間のニュースでは、世界の人口は64億人を超えたという。これだけの数の人々の大多数は河口や海岸近くに集中して住んでおり、都市化と近代化の波に乗って化石燃料を大気中に大量に放出しつつある。これによってヒマラヤやアルプスの高山の雪が溶け、氷河は後退し、極地の氷は溶けて海中に流れ出し、全世界で海面上昇が観測されている。言うまでもなく、海面上昇は河口や海岸に住む人々の生活に直接影響する。また、最近の科学者の研究では(例えば『TIME』誌、2005年10月3日号参照)、地球温暖化は台風やハリケーンを巨大化させ、集中豪雨や旱魃を深刻化させることが指摘されている。こういう事実を踏まえて考えてみると、いったい「災害」とはどこまでが本当の意味で「自然に」起こる現象(天災)であり、どこからを「人間の活動」の結果--つまり、人災--と見なすべきかは、きわめて判断がむずかしくなる。

 そういう状況下で、「人間は神の子である」という信仰をもって生きるということは、どう考え、どう行動することなのだろうか? これはきっと「すべては自己の責任である」という自覚をもって生き、行動することだ。「天災」というような、自分と関係のない“巨大な怪物”が突然、自分を襲うのではなく、自分を含めた人類の過去からの行動が積み重なって生じた結果を(一部は予測できていたにもかかわらず)、我々は不本意にも摘み取りつつあるのである。だから、この種の災難を避けるためには、正しい知識にもとづいて正しく判断し、行動することが大切である。我々の行動の基準を「欲望」に合わせるような生き方は改め、化石燃料を使わない、また生態系を破壊しない生き方へと転換することが求められているのである。
 
谷口 雅宣

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コメント

谷口 雅宣 先生
<生態系を破壊しない生き方へと転換することが求められているのである。>
に関連すると思われる意見を申し上げます。

都市部においては、コンクリートで覆われている部分(箇所)が多々あります。
そのほとんどは、水を通さない性質のものです。つまり、自然の降雨が地中に浸透する
自然界の営みを遮断(カット)している所が多々あるということです。

私は、地質学者でも生物学者でもないので、
そのことが地球全体にとって良いことなのか
悪いことなのか、厳密には分かりませんが、

想像として申しますと、良い影響を及ぼして
はいないと思います。

現在、水をある程度通す舗装が施されている
箇所がいくらかはあります。

今後、地球環境保全のためには、水をある程度通す舗装を逐次整備して行くことも必要であると私は思っております。

志村 宗春拝

投稿: 志村 宗春 | 2005年10月17日 19:52

志村さん、

 あなたのご意見に全く同感です。

投稿: 谷口 | 2005年10月24日 20:09

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