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2005年10月 4日

原油高の影響続く

 9月25日の本欄で、高値に貼りついている原油の値段の影響についての日本の経済専門家の考え方を紹介した。総じて楽観的であり、現在の高値は一時的だとの見方が大勢を占めた。しかし、10月4日付の『朝日』によると「3日発表の日銀短観では、素材産業や運輸業などで原油高によるコスト上昇が景気回復の足を引っ張る構図が鮮明になった」という。また、10月1日付の『産経』は「原油価格がこのまま高止まりすれば、電気・ガス料金は来年1月からさらに値上げされる可能性もある。暖房の需要期を迎え、エネルギーコストの上昇は冬場の家計を直撃しそうだ」と予測した。この文章中の「さらに値上げされる」という意味は、この10月からの電気料金や一部地域の都市ガス料金の一斉値上げに加えて、ということだ。

 ガソリンや灯油、電気料金、都市ガス、LNGの価格の上昇は、原油価格の上昇に連動する理由はよく分かる。皆、石油や天然ガスと深い関係にあるからだ。これによってドライバーがガソリンの消費を節約しているとの調査結果も本欄で報告した。石油を元とする素材産業や運輸業がコスト高になることも明らかだ。しかし、フェリーが運航を休止したり、航空運賃の値上げが進んだり、自動車タイヤが値上げされたり、カマボコやチクワなどの練り製品が値上がりしたり、砂糖やクリーニング代が値上がりするところまで来ているとは、知らなかった。前述の『朝日』の記事には、そういうことが書いてある。これを「最終製品への価格転嫁」というらしい。

 経済専門家の楽観論は、こういう最終製品への価格転嫁が行われ、実質的にほとんどの消費財の値上げが進んでもなお、原油の値段が1バレル当たり70ドルを越えない限り、日本経済は実質成長を続けることができるというものだった。「実質成長」というのは、そんなに重要なものなのだろうか、と私は思う。社会や産業構造が今日のように化石燃料に依存している状態から、それに代わる新エネルギーを基礎とした社会や産業に転換していく過程では、少々の景気停滞や倒産や失業が起こるのはやむを得ないだろう。日本は自由主義経済であり計画経済ではないのだから、人々は自由に各人の将来を考えて行動する。その中には将来を見誤る人も出てくる。儲かると思った商売が失敗したり、伸びると思った産業が衰退することは、よくあることだ。そういう失敗を経験して、人間が成長するという善い点もある。

 しかし問題なのは、将来性が見えてしまっている産業やエネルギー源に「執着する」ことだろう。これまでの政界や官界との“深い関係”とか“甘い汁”の味などが忘れられず、終りが来ることが分かっていても、その終焉の到来をできるだけ引き伸ばそうと必死になるのは愚かなことである。が、そう分かっていてもやってしまうのが人間か。巨大ハリケーンの到来とそれによるニューオーリンズの水没も、事前に充分予測されていたというではないか。地球温暖化も、もうずいぶん前から予測されていて、実際に極地の氷が溶け、氷河は次々に消滅し、高山の万年雪や氷も減っている。それでも「経済成長の方が大切だ!」と考える人々は、やはり何かに「執着」していると言わねばならない。

 そんな中でも、自分の非合理さに気がついたのか、あるいは家計の圧迫からやむを得ずにか、自ら行動を改めつつある人が増えているようだ。世界最大の市場であるアメリカでの自動車各社の9月分の新車販売台数が公表されたが、「軽トラック」と呼ばれるカテゴリー(ミニバン、ピックアップ車、SUVを含む)の販売で、燃費の悪い大型車の多いフォードが前月より5割、GMは3割も減った。これは今日放映されたCNNが伝えた数字だが、今日付の『朝日』夕刊では、前年同月比としてフォードが26.8%減、GMが29.5%減という数字を挙げている。燃費のいい日本車は好調で、全車種の前年同月比でトヨタが10.3%、ホンダ11.7%、日産16.4%の増加である。9月としては、過去最高の成績だという。これは、多くのアメリカ人が「燃費」を最大の基準として新車の購入を始めたことを意味する。自動車は1年や2年では買い替えないから、多くの人々は原油高も1年や2年では終らないと判断しつつあるのだろう。

 経済専門家の楽観論とアメリカ庶民の判断と、どちらが正しいことになるのか興味深い。

谷口 雅宣

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