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2005年9月 7日

石油高騰の“効果”は?

 イラク戦争やアメリカ南部のハリケーン被害の影響で石油の高騰が続く中、経済への影響が心配されている。70年代の第二次オイルショックと比較して、今後の世界経済は「もっと悪い」とか「それほどでもない」など、専門家によるいろいろな予測がある。素人の私としては、別の観点から一歩先を見た考え方を述べてみよう。まず第一に、“石油ピーク”説をとっている私としては、需要に対して供給が少なくなるのだから、石油の高騰はむしろ「当然」である。また、地球温暖化の進行を防止する立場から言えば、石油高騰によって消費が減少し、温室効果ガスの排出量が減少することは「望ましい」ともいえる。問題は、石油等の化石燃料に依存して発展してきた現代の様々な産業が衰退する可能性があることだ。しかし、この問題は、すでに相当前から予測されてきたことで、日本の多くの産業においては省エネ・省資源・高効率化の努力が積み重ねられてきた一方で、代替エネルギーの利用技術が開発され、徐々にではあるが発展しつつある。文明を支えてきたエネルギー源が大きく変化しようとしているのだから、化石燃料を基礎とする産業は次第に衰退し、新エネルギーを基礎とする産業にとって代わられるのは不可避なのだ。

 しかし、中国などのアジアの中進国の中には、国内産業保護のために石油の値段を不自然に低く抑える政策を長い間採ってきた国が多く、これが環境悪化を促進してきた面がある。石油が高騰すると、そういう国々の財政的負担は極めて大きくなるため、この環境破壊的な政策の転換を促すことにもつながる。その意味では、石油の高騰は悪い結果ばかりを生むわけではない。

 9月7日付の『ヘラルド朝日』紙は、アジア諸国によるこの政策転換がすでに始まっていることを伝えている。その記事によると、パキスタンは先週すでにガソリンと軽油の国内価格を値上げしており、インドは6日、補助金を減らす代わりに国内のガソリンと軽油の卸値を7%上げることを発表した。タイは、タキシン首相が約束した義務的省エネ政策の最後の煮詰めを行っており、中国、台湾、インドネシアの3国も、ガソリンと軽油に対する補助金を削減して、国内価格を値上げする方策を検討しているという。インドネシアは、すでに一部の石油製品で2割の値上げを実行したが、その背後には、エネルギー産業への補助金の額が今夏、政府支出の四分の一を超えるまでになったことがある。現在、同国で最も安価なガソリンは1リットル=42セントであり、中国では45セント。アメリカの今の平均が1リットル=84.5セントであることを思えば、その安さが分かる。因みに日本では、7日の店頭でのレギュラーガソリンの値段(全国平均)が1リットル=130円(1ドル19セント)となり、13年8ヵ月ぶりの高値をつけている。

 日本のガソリンの値段は高すぎるだろうか? これには様々な考え方があるだろうが、私は「自然資本」を正しく評価することを提唱した経緯もあるから、各国との比較では「高い」とは言えても、自然資本へのコストを反映するという意味では、必ずしも高いとは思わない。「大気汚染」や「二酸化炭素排出」という地球環境へのコストを、利用者が支払わねばならないと考えるからである。「化石燃料を燃やして利益を得られる」という時代は過ぎ去りつつあることを、我々は昨今の荒々しい気象から学ばねばならない。また、日本ではガソリンに税金をかけてきたおかげで、燃費のよいエンジンの開発が進み、ハイブリッド車などという高度技術が生まれたのだ。石油高騰時代には、これと同様の効果が日本だけでなく、世界中にゆきわたることになるから、代替エネルギー利用のための技術開発が一気に進むだろう。「値段が高い」ということが、善い結果をもたらす場合もあるのでである。

 日本では総選挙が近づくと「環境税」の問題がどこかへ行ってしまったが、郵政省の職員を大幅に減らして財政難を軽減したとしても、環境破壊的経済制度を維持していく限り、我々は繁栄しつづけるわけにはいかないのだ。ニューオーリンズの受難は、そのことを有力に物語っている。今重要なのは、環境保護のための社会経済制度の変更である。“人減らし”のためではなく、環境破壊をしないための税制改革である。レスター・ブラウン氏もそのことを訴えている:
 
 「私たちは社会経済システムを変えなくてはならない。そのためには、税制を再構築する必要がある。所得税を減らす一方で、環境への負荷の大きい生産と消費への課税を増やして、価格が生態学的現実を反映するようにする必要がある。地球環境の劣化を反転させることを望むならば、こうした税制改革は不可欠である」(『エコ・エコノミー』、p. vi)
 
谷口 雅宣

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