縮みゆく北極の氷
今日(9月30日)の『朝日新聞』の夕刊に載った北極上空からの写真を見て、アレッと驚いた。私が生長の家講習会で何回か使ったNASA(米航空宇宙局)撮影の写真とよく似ているのだが、凍結部を示す白い領域が「少し狭くなった」と感じたからだ。写真説明を見ると、「縮む海氷」と題してその通りのことが書いてある。29日に公表された写真で、北極圏での平均気温の上昇により、「北極海での海氷の面積が過去最小になった」というのである。
『ヘラルド朝日』紙には、もっと詳しい説明が載っていた。NASAは1978年以来、毎年9月に同じ角度から北極圏の写真を撮っており、それらを調べると、今年撮った北極圏の氷結部の面積は、1978年から2000までの平均値に比べて約20%狭く、ここ1世紀の間では恐らく最小だというのである。この「20%」を実際の面積で表すと「130万平方km」になるから、日本列島の約3.5倍の広さの氷が、ここ数年で消失したことになる。また、年間にわたって氷結している領域が溶けると、これまで氷によって太陽の光が反射されていた部分が海水となって熱を吸収することになるため、再び凍結することが難しくなる--つまり、北極圏の氷は長期にわたる融解の過程に入っているらしいというのである。
9月11日の本欄では、陸上の氷床が「貯水池」の役割を果たしていることを書いたが、北極圏にはグリーンランドがある。ここの氷が溶けだすと重大な結果になると考えられている。というのは、ここは日本列島の約6倍の広さをもつ世界最大の島で、その上はすべて氷床で覆われていて、氷の厚さは最大で2kmにもなるからだ。北極海の氷が溶けても海水の水位は上がらない。しかし、陸上にある氷が溶けて海へ流れ出せば、確実に海面上昇が起こる。NASAの公表した写真を見れば、北極圏で「次に」起こる氷の融解は、グリーンランド上であることが一目瞭然だ。
経済発展ばかりに目を奪われていると、暴風雨の巨大化と海面上昇によって手痛いしっぺ返しを受けることになるのである。
谷口 雅宣
(北極圏の氷について詳しくは、NASAのウェッブサイトを参照。)
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