ヤマボウシ実る
今日の東京の気温はは34℃にまで上がるとの予報だったが、原宿の私の執務室は30℃前後で“快適”であった。ヤセ我慢ではなく、空気が比較的乾燥していたこともあって、扇風機を回すと涼しく感じる。盛夏を経験したあとは我々の皮膚の汗腺が増えているから、同じ気温でも初夏より涼しく感じるという話を聞いたことがある。本当だと思う。そんな中、ジョギングの帰り途に神宮球場近くの小さな公園に寄り道した。ヤマボウシの実を見るためである。先週寄ったときは、赤く色づいた実を5~6個取って家に持ち帰った。ちょうど色づき始めていて、他の多くの実はまだ小さく、緑色のままだったから、1週間後の今日あたりは、赤い実が多く採れることを期待していたのだ。
公園にある3本のうち、いちばん日当たりのいい木が大きく、やはり実のつきもよかった。その木の下に赤い実がいっぱい落ちていた。自然は贅沢なものだと思った。すぐ目の前に4階建ての都営住宅が何棟も並んでいるが、採る人はいないようだ。理由は多分、この都営住宅の中庭には、ブドウや夏ミカンなど、実の成る木が何本もあるからだ。あるいは共働きが多くて、四季の移ろいを楽しむ余裕などないのかもしれない。私が採ったのは、しかし4個だけだった。公共のものを独り占めにするのは気が引けたし、第一、持って帰るための容器がなかった。だが、一つ冒険をしようと思い、そのうちの1個の皮を剥いて中身を賞味した。何かの本に「生で食べられる」と書いてあったのを憶えていたからだ。桃の実のような酸味のある甘さの、よい香りの果肉だった。意外に「洋風な味」だと思った。
ヤマボウシはミズキ科の落葉広葉樹で、5~6月に4枚の花弁をつけた白い花を咲かせる。庭の主木として使われるほか、街路樹にすることもある。淡紅色の花をつけるベニヤマボウシや、矮性白花のミルキーウェイというのも同種。ごく近種にハナミズキがあり、これは別名アメリカヤマボウシという。明治45年に尾崎行雄・東京市長がワシントンにサクラヲを寄贈したが、その返礼として贈られたのがハナミズキだ。こちらも紅白の花をつける種がある。5月の全国大会のころ、北の丸公園に咲いているのを見て、憶えている人も多いだろう。ヤマボウシの実は生食するほか、リキュールにもいいようだ。
灼熱の木蔭に赤く木の実落ち
谷口 雅宣
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