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2005年8月 9日

ロブスターの豊漁

 ニューヨーク滞在最終日の9日、ホテルから近い53丁目通りにある「ザ・ブラッセリー」という料理屋へ妻と2人で行った。メニューを見ると海産物がほとんどなので、獣肉食をしない我々にはありがたかった。レギュラーのメニューとは別に、色刷りでロブスター料理を集めたメニューが来たので、冷製ロブスター入りサラダとブイヤベースを注文した。両方ともアペタイザーの部類に入っていたものだから、注文を受けたウェイターは「それだけでいいのか?」と不思議そうに聞いてきた。私は自信をもって「これでいいです」と言った。アメリカの料理は日本の倍ほどの量が出るから、うっかり日本のつもりで注文すると大量の残飯を出すか、無理に食べてウンウン言わなければならなくなる。若い人は、それでもどうにか耐えられるかもしれないが、私のように中年を過ぎると、食べすぎは自殺行為に似てくる。数日前に日本料理店へ行ったときも、食べ切れなかったことも思い出して、メインコース抜きでの食事で済ますようになっていたのだ。

 ロブスターは「イセエビ」とも訳されるが、大きなハサミをもっているから日本のイセエビとは別種で、「ウミザリガニ」と呼ばれることもある。ザリガニのお化けのようなエビである。高級食材だと思っていたが、今回の旅ではメニューによく出ていて、それほどの値段でもない。そんなわけで、昨日(8日)の本欄で書いた昼食でも、何の気なしにロブスターを使った料理を注文したのだった。しかし、9日付の『ニューヨーク・タイムズ』を見ると、ここ数年、メイン湾(Gulf of Maine)ではロブスターの豊漁が続いていてその理由が分からず、科学者が頭をひねっている、という記事が大きく載っていた。メイン湾とは、ニューヨーク市から海岸沿いにロードアイランド州、マサチューセッツ州を越えて北東方向にいった先にあるメイン州沖の海のことだ。ここのロブスターは昔から有名だが、そこまで行かなくても、ロードアイランド沖やマサチューセッツ州のケープ・コッド付近でも、10年前にはよく獲れたのだそうだ。しかし、近年は近海では獲れなくなり、その代わりメイン湾で何年も異常な豊漁が続いているらしい。

 ここのロブスターは天然物だ。餌を入れたカゴに紐をつけて海底に下ろし、餌を食べに来たロブスターをネズミ捕りのようにカゴに閉じ込めて捕まえる。そういうカゴをいくつもつなげた紐を海上のブイにつなげておき、ころあいを見て船で行って引き揚げるらしい。メイン湾には、このカゴが300万個以上も仕掛けてあり、その位置を示すためのブイが海面いっぱいに浮かんでいて、操船にも差し支えるほどだという。それほどよく獲れるのだ。この豊漁の原因について、付近のタラなどの魚を獲りすぎたためだとか、海水の温暖化で成長速度が変わったとか、日本などに輸出するウニを育てるために海底の状態を変えたからとか、カゴに仕掛けた餌をロブスターの幼生が食べているからだとか、いろいろ言われているが結局、よく分からないらしい。

 そんな記事を読んでいると、自然の生態系と人間の活動とが密接に関係していることを改めて感じた。「豊漁」になる生物がいる一方で、それを食していた魚類が減っているというのでは、豊漁は手放しでは喜べまい。大体、ロブスターの生態自体がまだよく分かっていないらしいのだ。レストランのメニューからは分からないことが、実に多くあることが分かった。

谷口 雅宣

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コメント

アメリカの料理の量がものすごく多いことは、私も三年前に新婚旅行でハワイに行ったときに思い知らされました。確かにあの量は半端じゃないです…。

ロブスターも食べました。コース料理は頼まずに単品で注文しましたが、それでも私の胃袋には入りきらないほどの量の多さでした(苦笑)

投稿: 山中 | 2005年8月11日 07:17

山中さん、

 アメリカでは、1食の量が多くなってきているという話を聞いたことがありますが、もしかしたら日本でも同じ現象があるかもしれませんね。

投稿: 谷口 | 2005年8月12日 13:47

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