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2005年8月23日

中高生の喫煙率が“激減”

 新聞を読んでいて久しぶりに「善いニュース」に出くわした。中高生の喫煙が大幅に減少しているというのである。『産経新聞』が8月23日付で報じた。ところが、これが1面や社会面にではなく、ローカル面に掲載されていたというのは、うなずけない。決してローカルなニュースではなく全国統計なのに、である。埼玉県和光市にある国立保健医療科学院の研究班が10万人規模の中高生を対象に16年度に実施したアンケート調査による。それによると、平成12年度との比較では、「直近1ヵ月に1回以上喫煙した」という生徒の割合が高校3年男子は37%から21.8%に、中学1年男子は6~8%から3.2%に、高校3年女子は16%から9.7%に急減している。そして、その原因の背後には「ケータイの普及」があるという分析なのだ。

 もちろん、ケータイだけが原因ではなく、同科学院では大人の喫煙率の低下や公共の場での禁煙の浸透なども中高生に影響していると見ているが、“ケータイ非携帯派”の私としては何とも複雑な心境だ。同科学院の林謙治次長の推測では「中高生の携帯電話の所有率が増えており、タバコに使う小遣いが圧迫された可能性も高い」というのだ。私は「ウーン」と考えてしまう。「ケータイ所有率」の増加が喫煙減少をもたらすなら、「ウォークマン所有率」や「ゲーム機所有率」「ラジカセ所有率」「個室所有率」などの増加は、なぜ喫煙率の減少に結びつかなかったのだろう? 「個室」を除けば、どれも小遣いの出費増加の原因になるはずなのに……。それとも、ケータイだけは特別であって、ゲームや音楽への欲求など役に立たないほどの中毒性をもったタバコを、さらに上回る中毒性をもっているため、タバコは毒によって毒を制されたということなのか。林次長は、このケータイの普及に関して「今後喫煙率低下との関連性を調べるべきだろう」と言っているが、ぜひ詳しく調査して結果を教えて頂きたいと思う。

 私はケータイを持たないので「ケータイの魔力」について語る資格はないかもしれない。しかし、3人の子供をケータイから遠ざけようと努力してきた親の立場から言わせてもらうと、高校生活を終るまで彼らにケータイを与えなかったことを、私は全く後悔していない。私は、パソコンを使った電子メールの使い手としては、日本ではかなり“草分け”的存在だったと自負している。だからこそ、あの魅惑的な電子メールがいつどこでも手軽に使えるケータイなど、学齢期の子供には与えてはいけないと考えたのだった。人間には、特に若い頃には、誰の助けも借りずに独りで悩んだり、努力したりする時期が必要だと思うのである。友だちはもちろん大切である。しかし、判断力と実行力は、他人の顔色をうかがったり、他人の意見ばかりを聞いていては養われない。

 また、ケータイは、他人のプライバシーを踏みにじる機械であり、かつ「公」の中で強引に「私」を主張する機械である。そういう道具を子供の頃から与えていることと、最近の子供が、公共の場でまったく「慎み」を知らずに、あたり構わず座ったり、大声で騒ぎまわったりすることと関係がないのだろうか? 私は、こういう社会現象の背後に共通のメンタリティーを感ぜずにはいられないのである。

谷口 雅宣
 

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コメント

谷口雅宣先生

 中高生の喫煙率が激減したというのがケータイの影響かも知れないという事ですが、喫煙率が減少した事自体はいいことだと思います。

 私は地域で野球チームの会長をしていて大学生なんかとも話す機会がありますが、彼らが言うに今は不良とか番長とかそういう学生は殆どいないのだそうです。そう言えばこの頃、余りいじめの話を聞かなくなったような気がします。
 私の地域はPTAとか町内会とか野球チームなどの親同士の付き合いが割合、緊密にあって、お互いの子供達を地域で見合っているような環境なので変な子が余り、出ないようです。

 ケータイに関しては高一の息子には私も今まで持たせていませんでしたが、友達が全員持っているそうで、そろそろいいかなと思っておりましたが、先生はお子さんに高三まで持たせなかったとお聞きして、どうしようかと再考しています。

堀 浩二拝

投稿: 堀 浩二 | 2005年8月24日 09:41

副総裁先生
中高生に携帯は必需品となりつつあります。進学、進級の際の新しいクラスメイトとはまず携帯電話のアドレス交換から始まるそうです。それができないと友達作りに出遅れてしまうそうです…。
それから、私は10年ほど前から、携帯電話を利用していますが、携帯電話はクレジットカードに似ていると思います。どの位使ったかが請求がくるまでよく分からないのです。中高生たちの中には、1月の請求の上限を決め、それを超えると小遣いから出すことにしている子が多いと思います。通話料もだいぶ下がりましたし、学割などの割引サービス合戦が激しいので、請求額を抑えられるようになりましたが、それでも小遣いを圧迫しているのだとおもいます。
それから、私が中高生と接しての感覚では中高生のうちから喫煙が習慣になるような生活の子ほど携帯電話をよく利用しているのではないかと思います。
長文のコメントで申し訳ありません。

投稿: 大平收一 | 2005年8月24日 10:11

大平さん、

 率直な感想、ありがとう。「必需品となりつつあります」ということですが、それは自動車が我々にとって必需品であることと似ていますね。新技術が生まれ、生活に定着すれば“必需品”との認識が生まれます。冷蔵庫もエアコンもパソコンも必需品です。そうです。我々が必需品に「している」のです。一体、なぜでしょうか?

投稿: 谷口 | 2005年8月25日 00:00

副総裁先生
全国青年練成会の運営のため総本山へ出張しておりました。本日帰京しました。
先生のご質問に私なりにお答えいたします。
やはり「心」が問題だと思います。「心」が「便利さ」や「必要性」を認めることで、「あれば便利なもの」が「無くてはならぬもの」へと変化していくと思います。
そういう意味では、煙草や酒にも似ているといえるかもしれません。

投稿: 大平收一 | 2005年8月29日 20:06

副総裁先生
三好良治と申します。
前に一度だけ、掲示板に書き込みをした事のある青年会に所属している23歳の者です。
中高生の喫煙率の減少と形態の普及率の関係の記事を読み、喫煙している中高生が減ったのはいいのですが、(一概には言えないのですが)マナーの悪い携帯電話の使い方をしている子も増えたと思うと…複雑な思いでした。
僕も、大平先生お同じ意見で、「中高生のうちから喫煙が習慣になるような生活の子ほど携帯電話をよく利用している」と思います。
また、よく携帯を利用する子の行動を見ていて思ったのは、「孤独」というのを抱えているように見えました。自分が一人ぼっちだという感情に耐えれないから携帯に依存しているように思えるのです。
その所に今の社会の問題があるように思えるのですが?如何でしょうか?
僕は、19歳まで携帯を持っていなかったので、副総裁先生のお子様と似たような感じでした。今振り返ってみると、高校時代に、皆が持っていたからと言って自分も持っていたら、自立心がなく、物事を考えることができない大人になっていたのではないかと思えます。
英才教育とかいうの目的で、小さい子供の時分からパソコンや、携帯をもたせる親が多いようですが、本当に大切なのは、自分で一人でも立っていけることのように思えます。
その点で、便利なものに慣れさせないと言うのは大事だと思いました。
長文、申し訳ありません。
三好良治拝

投稿: 三好良治 | 2005年8月30日 03:13

三好 さん、

 書き込み、ありがとう。
 ケータイを19歳まで持たなかった……ですか。それはご自分の意志ですか、それともご両親の考えですか? 交友関係に支障なかったですか?

投稿: 谷口 | 2005年8月30日 13:05

副総裁先生
お返事遅れて申し訳ありません。
書き込みした後、会社の仕事(半導体製造装置の研究開発)が忙しくなって、帰宅も午前様続きで書き込みできませんでした。
家にインターネットを引いていないため、ネットカフェを利用して書き込んでいます。
(そんなわけで、メルアドは携帯になっています)

それで、ケータイを持たなかったのは、僕の意思というよりも、親の意思です。
経済的な理由もありますが、贅沢なものに慣れさせたくはないというところもあります。
喧嘩になることもあったのですが、喧嘩しながら親の意思を感じて、考えを改めました。

また、19になるまで持たなかったことで、特に交友関係に支障もありませんでした。
待ち合わせとかも、事前に時間を決めていればすみますし、喋りたくなれば相手の家に電話すればすみますし。
友達も、個性的な面々だったので、皆にあせて行くいうような付き合い方よりも、意見を言い合うほうを善しとする感じだったので、友達づきあいにしんどさを感じることもありませんでした。

まぁ…支障といえば、友達が自宅に電話してきて、たまたま親が取ったときは尋問されたり、僕を呼び出すときに受話器を持ったまま、
「りょーじ、りょ-じ、電話やでぇ~!!」と叫んで呼ぶものですから、相手の子が怖がったことぐらいです。(大阪のおばちゃん特有の対応ですので言葉もどぎつくて)

それと、19歳から持ったケ-タイも発信制限がされている携帯電話でして、受信専用に使っていました。
便利が良いものになれていなかったので、不便というの認識がなかったです。
だから、前の書き込みのような心の孤独のほうに原因があるのじゃないのかと思ってしまうのです。
またまた、長くなってすいません。
三好良治拝

投稿: 三好良治 | 2005年9月 4日 22:08

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» 中高生の喫煙減少傾向 [乾物屋 塩釜仲卸市場 東商店]
なんでも中高生の喫煙激減傾向にあるらしいです。背景には公共の場での禁煙や、携帯電 [続きを読む]

受信: 2005年8月23日 17:51

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