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2005年7月27日

拝啓、トヨタ自動車殿

 このたび御社におかれては、高級車ブランド「レクサス」を本邦で発表されたことを知り、複雑な気持を抱いています。御社はもちろん、21世紀の世界販売戦略の重要な一環として、この決定を下されたことと思います。小生のような一消費者が御社のような世界企業に何かを申し上げることは、もしかしたら意味がないことかもしれません。しかし、御社がこれまで社会に提供されてきた製品群の品質のみならず、開発の精神、ユーザーへのサービス、またトップメーカーとしての同業他社への配慮等に鑑みて、次なる自家用車はぜひ御社製品をと考えていた者が、今回の発表を困惑して受け止めていることをお伝えしようと思います。願わくはこの一文が、御社の優秀なスタッフの一人の目にでも留まり、人類の将来に責任のある世界企業としての、御社の今後の意思決定の参考になりますれば、喜びこれに過ぎるものありません。

 本日、7月27日付の新聞報道によりますと、御社は日本国内で進行する“本物志向”に着目され、資産家や高額所得者などの“富裕層”にターゲットを絞って今回の決定を下されたそうです。(産経)また将来、人口減少が進むと予測される国内市場で、自動車の“和製高級ブランド”を確立し、少ない販売台数でも高収益を目指すお考え(朝日)とも聞きます。競合する車はメルセデス・ベンツとBMWだそうで、御社は年間25万台ほどで推移しているこの高級車市場で、先行する輸入乗用車のシェアを奪って文字通り“日本一”を達成したいとのお考えと見受けられます。そのため、すでに「クラウン・マジェスタ」や「セルシオ」を配備しておられる同じ価格帯に、2004年にアメリカの高級車市場で最多の29万台を売った「レクサス」を投入し、“アメリカ帰り”の箔によって市場奪還を図ろうとされているようです。

 小生は、1983年に初めて1500㏄のニッサン車を購入し、その後、ひとクラス上のニッサン車に買い替え、家族が増えたため1995年にホンダの7人乗りワンボックス車に乗り換え、3人の子供の独立を見届けようとしている今日、夫婦で使えるひとまわり小さい乗用車を探しているものです。その間、バブルの崩壊を経験し、“団塊の世代”では最後部に位置する年齢です。小生と同年齢で経済的に成功している人々は、大分前から御社のライバルとされているベンツやBMWの高級車、あるいは馬力のあるジープ・クラスのSUV車に乗っているのを小生は知っています。しかし、小生はそういう車を所有したいとは全く思いません。たぶん、小生が変わり者なのでしょう。小生は「ステータス」とか「高級感」のために自動車を欲しいとは思わないのです。ご存知の通り、そういう車はガソリンを大量に消費し、二酸化炭素の排出によって地球環境に深刻なダメージを与えるからです。小生にとって、そういう車の所有者は、「自分は地球環境問題に関心はない」と宣言しているように見えるのです。「貧しい国の人々や生態系にとって有害なことでも、自分がカッコヨク見えれば何でもするさ」と言いながら運転しているように見えてしまうのです。

 ですから、御社がハイブリッド車「プリウス」を発表された時、小生は快哉を叫びました。「さすがトヨタだ!」と思いました。あの静かな走り、すばらしい燃費、制動時に充電するという“逆転の発想”--小生は早速、仕事用に車を買い替える際はプリウスを希望する旨、総務部長にお願いしました。その車には、今でもお世話になっています。個人用の車に関しては、小生は待ちました。御社が、あの素晴らしいプリウスの技術を、小型のSUV車に載せてくれることを……。何年も待ちましたが、御社は何かお考えがあってか、SUV車にハイブリッドの技術を載せることをされませんでした。昨年、ようやくそれが実現しましたが、残念ながら、それはアメリカでのことでした。日本より先行してアメリカで……というのが、最近の御社の戦略でしょうか。「アメリカで成功すれば、日本でも売れる」という読みでしょうか。それとも、今回のレクサスのように「アメリカで人気だから」ということをセールス・ポイントにしないと、日本人は興味を示さないとお考えですか? 小生のような日本人は、本当に少数派でしょうか?

 でも結局、ハイブリッド版の「クルーガー」と「ハリアー」を日本で出して下さったのですから、御社には感謝しなければなりません。「待望の車種」だと小生は小躍りしました。そして先日、休日を利用して「クルーガー・ハイブリッド」に試乗しました。感想は「大きすぎる」ということです。以前から乗っていたホンダ車とほとんど同じ大きさですから、一回り小さい車を望んでいる小生には、買い換える意味があまりありません。もしそれに意味を見出すなら、ハイブリッドの特長である燃費の良さがあれば、でしょう。でも、同車の燃費はカタログ値で「16キロ」です。御社では周知のことと思いますが、同車と同じクラスの他社のSUVの中には、ハイブリッドでなくても「10キロ」を上回るものがあります。事実、小生の乗っているホンダのワンボックス車は、走り方によっては10キロ以上いきます。これは10年前の車です。今年新発売の新車で、しかも世界最高のハイブリッド技術を搭載した車が、10年前の車より燃費が「6キロ」しか伸びないのでしょうか? 値段は、150~200万円も高いのです。

 もう一つ驚いたことがあります。それは、クルーガー・ハイブリッドを担当した若い販売員が強調したのが、「加速がすごい」ということだったことです。彼は「ゼロヨンを走らせたらポルシェより速い」と言うのです。小生は、自分の耳を疑いました。ハイブリッド車のセールス・ポイントは、なぜ「加速」なのでしょうか? 小生は、減少しつつある石油をできるだけ効率よく使い、二酸化炭素をできるだけ排出しない、5人乗りまでのSUV車を探しているのです。加速なんて、どうでもいいのです。それを求める人は、ポルシェやBMWを買えばいいのです。小生は、この経験から、御社の考え方に少し疑問をもつようになりました。御社のような会社が、小生の望むような車を作れないはずがありません。それは「作れない」のではなく、よく検討されたすえ「作らない」と決められたのではないでしょうか。そして今回、ガソリンを無駄遣いする高級乗用車「レクサス」の逆輸入を、ファンファーレ付きで発表されました。御社がもし、それによって企業イメージが向上するとお考えならば、言わせてください--それは逆効果です、と。

 企業にとって利潤を求めることは確かに必要なことです。しかし、御社のような世界企業になれば当然、それ以外のことを社会は求めます。御社の販売戦略は、地球環境に大きな影響を与えるからです。御社の利益が増大しても、地球環境が悪化すれば結局、御社も増加分の利益を災害対策や環境対策に回すはめになり、損失を出すことにもなりかねません。せっかく開発された優秀な環境技術なのですから、それを金儲けの手段にではなく、本来の環境保全の手段にしてくださることを切に念願いたします。

谷口 雅宣

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コメント

谷口雅宣先生

 先生のご所望のSUVハイブリッド車とは丁度トヨタのカリブ位(1600,1800cc)でしょうか?

 と申しますのは私は10年前、現在のモデルにモデルチェンジしたばかりのカリブ1600ccを購入し、現在走行距離約17万KMでエンジンの調子もますますよく、四駆にもかかわらず、燃費は10~12km/ℓ位走ります。

 もう10年も乗っているとディーラーのセールスマンから新車購入の打診をよく受けますが、カリブクラスでハイブリッド車が出たら買うよといつも言うのです。

堀 浩二拝

投稿: 堀 浩二 | 2005年7月28日 15:12

堀さん、

 コメント、ありがとう。

 走行17万キロというのは、スゴイですね!
 カリブというのは、そんなに燃費がいいのですか? ぜひ、ハイブリッドをと思いますが、もしかしたら、トヨタはそういうのは出さないつもりではないでしょうか。少なくとも、すぐには。

投稿: 谷口 | 2005年7月28日 23:42

谷口雅宣先生

 この燃費10~12km/ℓというのは私の車がマニュアルだからだと思います。ディーラーのセールスマンに話したらそれは異常だとまで言われました。

 また、私は常日頃から燃費に気をつけた運転の仕方を心掛けています。妻の運転だと途端に燃費が悪くなりますので、運転の仕方にもよるのだと思います。

 堀 浩二拝

投稿: 堀 浩二 | 2005年7月29日 12:18

谷口雅宣先生

合掌ありがとうございます。
私は沖縄教区で青年会活動をさせて頂いております山城和史と申します。
先生のHP(本欄)や御著書では、いつも解りやすいご指導を頂き誠にありがとうございます。

早速ではありますが、本題について一言書かせていただきたいと思います。

もう既にご存知かもしれませんが、今朝(10/6)のTV報道によると
先生が失望されたトヨタの高級車販売戦略は必ずしも金儲けだけではないようです。
今回の富士重工株取得に関する報道によりますと、
再び日米貿易摩擦になりかねない程トヨタの力がGMを上回りそうなので、
防御策として、今回のような株取得という形でGMを助けたり
GMと同じ(燃費が良くない大型車や高級車:←私の解釈)車を市場に出すことで
GM(アメリカ)のご機嫌をとっている、そういう見方もあるようです。

なるほど、あんなに素晴らしい技術をもっていながら今さら何故?と
副総裁先生と似たような感想を持っていた者としてはこの報道には少し安心しました。

しかし本当のところはトヨタの社長でもない私が知る由もありませんが、
この御文章(July 27, 2005 拝啓、トヨタ自動車殿)は早計のような気がしましたので
古い話題ではありますが一言書かせて頂きました。
再拝

投稿: 山城 和史 | 2005年10月 6日 08:05

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レクサスに興味を持つのは30~40台の男性BMW乗り、ということでBMWなど輸入車をターゲットにしたトヨタからの宣戦布告に関して。 もともと国内で売ってたアリスト、ソアラ、アルテッツァがなんでこんなに高くなるの?と思ってしまうのはBMWびいきの視点だからでしょうか・・・。 みなさんの意見はいかがですか? 詳しくは関連記事・参照記事をまとめていますのでご覧ください。 ... [続きを読む]

受信: 2005年7月28日 08:11

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