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2005年7月 9日

神奈川県の“快挙”

 私はかつて本欄の5月13日と29日の書き込みで、マスメディアが“悪いニュース”ばかりを報道する傾向を批判した。もちろん、ニュースの定番として“人情もの”とか“受賞もの”などの明るい記事もたまに出るが、こと犯罪統計に関しては、数ある数字の中から“光明面”ではなく、ことさら“暗黒面”を取り上げて社会に警告を発するというのが、ジャーナリズムの一つのスタイルとなっていた。ところが最近、そうでない例を発見して嬉しくなった。7月7日の『神奈川新聞』の地域版に出た記事が、それだ。今年上半期の神奈川県内の刑法犯認知件数が前年比で「25.1%減少」したというのだ。

「刑法犯認知件数」というのは、犯罪の発生件数とは違う。警察に上がってきた犯罪の通知や被害の訴えを、警察が受理し、書類に残したものの件数を言う。だから、訴えられなければ犯罪にならない種類の“親告罪”(名誉毀損、著作権法違反、強制猥褻など)は、発生しているすべてがこの統計に含まれるわけではない。また、「刑法犯」とひと言でいっても、その中には道路交通法違反(例えば、スピード違反)から殺人事件まで含まれる。そして、前者の件数の方が後者より圧倒的に多いことは少し考えれば分かることだ。しかし、それにしても、前年より25%もその数が減るというのは驚くべきことではないだろうか。神奈川県といえば、横浜や川崎、相模原などの大都市や東京のベッドタウンを数多く含むから、「首都圏で犯罪が激減している」との印象さえ受ける。

『神奈川新聞』の論評は、しかし案外サラッとしている。曰く--「県犯罪のない安全・安心まちづくり推進条例の施行初年は、まずまずの滑り出しになった格好」。県警の生活安全総務課の分析では、この快挙の原因は「行政や住民の意識変化に加え、声掛け・職務質問・検問という『見せる』対策が総合的に犯罪抑止効果を挙げた」からという。犯罪が四分の一も減るという成果の中心的役割を果たしたのは、犯罪全体の9割を占める「盗み」(窃盗)が28.5%減ったことによるらしい。しかし、街頭犯罪である空き巣、路上強盗、ひったくりもそれぞれ36.5%、31.7%、15.3%減っている。また、検挙率(受理した犯罪全体に占める容疑者検挙の割合)は前年比で9.3ポイント向上し、32.7%だった。殺人や強盗、強制猥褻などの凶悪犯の検挙率はさらに向上し、前年比10.9ポイント増の55.5%になったという。

 私は、犯罪というのは様々な要因が複雑に絡み合って生じる社会現象で、「アルコール中毒」や「ホームレス」の発生と同じように、行政側の努力で抑止することには自ずから限界があると思っていた。しかし、神奈川県の成果を見ると、市民の協力もあったのだろうが、「人間やる気になればできるものだ」との感を深くした。同県の今後のさらなる健闘を期待したい。

谷口 雅宣

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