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2005年6月 8日

“京都後”の行方

地球温暖化防止のための京都議定書が2012年に終了するのをにらんで、各国は“京都後”に向けて動き出しているらしい。目標はもちろん、同議定書が定めている数値以上に温室効果ガスを減らすことだ。なぜなら、同議定書での削減量は、とても充分とは言えないからだ。しかし、その方法論をめぐって意見が分かれているという。一つは“京都の息子”(son of Kyoto)をつくること。つまり、京都後にも同議定書の基本的枠組みを変えず、温室効果ガス削減対象となる国の数を増やしたり、削減の目標値を上げることで対処するというもの。もう一つは、同議定書の枠を取り外して、ゼロからスタートするというものだそうだ。5月28日付の『NewScientist』誌が伝えている。

京都議定書の欠陥の一つは、温室効果ガス削減を義務づけられているのがいわゆる“先進国”だけで、いま急速に経済発展しているブリックス諸国(BRICs、ブラジル、ロシア、インド、中国)などが含まれないことだ。しかし、現在の気候変動の激しさや、砂漠化や黄砂の被害を経験した途上国の中には、自らの意思で温室効果ガス削減等の対策を講じる国が出てきいている。アルゼンチン、メキシコ、ブラジル、南アフリカ、インドネシア、中国などがそれである。例えば、アルゼンチンは、重油やガソリンよりCO2排出量が少ない天然ガスを使う自動車の数が、すでに世界一である。また、中国でもエネルギー効率を高める活動は盛んであるという。

しかし、発展途上国にもCO2削減を義務づけるとなると、その数値目標の平等性と効果が問題になる。そこで、もともと先進国にだけ厳しい目標を課している京都議定書の枠組みを一度外してしまい、新しい考え方で、途上国やアメリカも参加できるような統一基準を盛り込んだ案が検討されているのだ。その一つは、「すべての国に平等」に義務を課す方法で、地球上のすべての人が平等に温室効果ガスを排出できるとの前提で目標値を定めるものだ。つまり、各国の人口に比例して排出許容量の上限を定めるという考え方だ。もう一つの方法は、国内総生産(GDP)に対する炭素排出量を「炭素集中率」として捉え、その数値の削減目標を決める方法である。これによって、温室効果ガスを排出しない技術を育てようとするものだ。前者を押しているのは、スイス、ケニア、メキシコ、モナコなどで、後者の推進者は今のところアメリカだけだそうだ。

ところで私は、石油の生産量が頭打ちになる「石油ピーク」が近づくことで化石燃料全体の価格が高騰し、それによって(多少時間はかかるが)代替エネルギーや自然エネルギーへの転換が起こることを期待しているが、どうだろうか? 現に昨今の原油の値段は1バレル50ドルの大台を突破しつづけていて、その影響からアメリカではハイブリッド車の生産が注文に応じ切れず、プレミアムがついている状態という。ただし、このハイブリッド車の販売台数がアメリカではまだまだ少ない。6月7日の『ヘラルド朝日』紙によると、同国でのハイブリッド車の売り上げは、自動車全体のわずか0.5%にすぎない。これが2012年までに4%になるという予測があり、トヨタ自身は10%を目指しているらしい。しかしこの国での問題は、アメリカ人は伝統的に「馬力のある車」が好きだということだ。あるアメリカの調査会社が最近、人々が自動車を買う際の基準を調べてみると、56の基準の中で「燃費のよさ」は28番目にすぎなかったという。私の期待は空しいのだろうか。

谷口 雅宣


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コメント

谷口雅宣先生:

カリフォルニア州知事、シュワルツネッガー氏は最近、年間1200万ドルを使って建設する「Hydrogen Highway」を提唱しています。水素をエネルギー源とする車のためのステーションを建設するわけです。最近のカリフォルニア住民の投票で決まったES細胞研究のための年間3億ドルの公費の支出と比べてみれば、少ないもですが、環境改善には貢献すると考えられますので良いことだと思います。

川上真理雄

投稿: Mario | 2005年6月10日 01:44

川上さん、

 シュワちゃんもやるねぇ! なんて言ったら、
カリフォルニアの人に怒られるのでしょうか?

 彼は共和党でしたかね? 環境問題に
なぜ熱心なのでしょう?

投稿: 谷口 | 2005年6月10日 15:42

谷口雅宣先生:

 知事の人気は政治家としての人気とスターとしての人気が入り交じっているのではないでしょうか。これまで州財政回復のために大抵とられてきた手法は、まず高齢者の福祉関係費と教育費の削減です。義務教育課程の子供を持つ親としては、どの政治家でも行うことなのですが、やっぱりがっかりします。しかし、環境問題の点では応援できます。ハリウッドスターは環境問題、エイズや同性愛、世界の貧困と飢餓等の問題にに対して積極的にアピールする人の割合が他の職種と比べて多いような気がします。シュワルツネッガー氏は州知事選の時から、環境問題に関しては肯定的な発言をしていました。

川上真理雄

投稿: Mario | 2005年6月11日 01:17

州知事は共和党です。民主党の強い州の知事や大きな市の市長は共和党員が多いようです。ボストンしかり、ニューヨークしかりです。

川上真理雄

投稿: Mario | 2005年6月12日 01:40

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