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2005年6月 9日

“北の核”と共存できるか?

5月31日の本欄で、日本のメディアがアメリカと北朝鮮の間の“キナ臭さ”を報道しないのは、日本政府の「目立たないようにやる」方針への協力か、などという憶測を書いたら、その後、続々と朝鮮半島をめぐるキナ臭いニュースが報道され始めた。私はバランス感覚を保つために『朝日新聞』と『産経新聞』の双方を読んでいるが、この朝鮮半島の問題については、なぜか『朝日』の方が詳しく報道しているようだ。

それらの報道によると、すでに本欄でお知らせしたようなアメリカの軍事的圧力が奏功したのか、北朝鮮は、アメリカとのニューヨークでの接触を求めてきたが、6月6日の米朝会談では「様々な問題に関して見解を表明したが、6ヵ国協議復帰の意図については明確にしなかった」とホワイトハウスは発表した。(『産経』)この「様々な問題に関しての見解」が何であるかについて、『朝日』は8日の夕刊で北朝鮮は「核保有国として処遇されなければならない」との要求があったと伝えている。このことを裏づけるように、北朝鮮の外務次官は8日に放送された米ABCテレビのインタビューで、「米国の攻撃に対する防衛のために十分な数の核爆弾を保有している」と明言した。(『朝日』9日夕刊)

さて、ここからは私の想像だが、北朝鮮は結局、アメリカの軍事的圧力に対して、アメリカに直接メッセージを伝えることを急いだと思われる。そのメッセージとは、「我々は自国の核施設に対してアメリカが先制攻撃をしても、その攻撃によっても生き残れる数の核爆弾をすでに用意している」ということだろう。「アメリカの先制攻撃によっても生き残る」という意味は恐らく、イラクでも使われた地中貫通弾「バンカーバスター」を積んだステルス爆撃機による攻撃でも、地下施設に隠された核爆弾をすべて破壊できない--という意味だ。もちろん「生き残る」のは核爆弾だけでなく、金正日氏を含む政権中枢部も含まなければならない。そして、生き残った後は報復攻撃に出ることになる。

北朝鮮がアメリカの先制攻撃を恐れていることは、8日付の『産経』のソウルからの報道でも明らかだ。それによると、この国では今年の4月から国際電話の9割が遮断され、約2万台の携帯電話が没収されたという。韓国の『中央日報』の報道を引用したものだが、同紙はその目的について「米国からの先制攻撃に対応するためで、内部情報の流出遮断が目的とみられる」と書いている。インターネットの使用も厳しく制限されているそうだ。事実上の戦時体制といえる。

そんな中で希望がもてるのは、中国の王光亜・国連大使が7日に、6ヵ国協議再開の時期について「今後2~3週間になる」との見通しを述べたことだ。(『朝日』8日夕刊)アメリカのヒル国務次官補も7日、「北朝鮮側は6者協議への関与を継続する意思は示した」(同)と説明している。アメリカは北朝鮮に“強硬”であるが、韓国と中国は“同情的”なのである。日本は拉致問題もあるので、強硬な“アメリカ寄り”であることは言うまでもない。この両派の“温度差”を利用して、北朝鮮は核兵器の開発を続け、経済援助を引き出してきた。問題は、北朝鮮は核実験をしないまま、事実上核保有国と見なされる可能性が増大しつつあることだ。そうなると、日本は北朝鮮の核兵器を“限りなく黒に近い灰色”のものと見なしながら、かの国と共存する選択肢に直面することになる。

谷口 雅宣

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