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2005年6月10日

“吸収論”と“崩壊論”

前日に引き続き、朝鮮半島情勢について……。北朝鮮をめぐる韓国とアメリカの“温度差”の原因は、地政学上の立場の違いに加えて、東西ドイツの統一をどう見るかの違いにもあるらしい。

【吸収論】韓国は、ドイツ統一で西ドイツが被った経済的、社会的負担はかなわないと考え、徐々に、時間をかけて“北側”を自国社会に同化させる方策を考えている。ソウルが北のロケット砲の射程内にあるという地政学上の問題ももちろんあるし、本質的に同一民族である“北”と戦端を開くことは、できるだけ避けたいに違いない。だから、北との人的、社会的、経済的交流を拡大する“太陽政策”を推し進めている。“北”が核兵器をもつことはもちろん好ましくないが、“北”との軍事衝突はもっと好ましくないのである。

【崩壊論】対するアメリカは、“ビッグバン”ではないが、どうも北の政権崩壊を期待し、また信じているようだ。これには、ベルリンの壁崩壊によって、東西ドイツ統一が短期間に実現したことが指針になっているらしい。特にブッシュ政権の中には、物事を“善悪”で割り切る考え方の人が多いらしく、「“悪の政権”はいずれ崩壊するが、アメリカがその崩壊に手を貸すことは善である」との思考が続いているのではないか。アフガニスタン侵攻やイラク攻撃は、そんな論理が一部働いて行われた。「悪とは取引しない」との強硬姿勢が、ここから生まれているのだろう。地政学的な側面から見れば、“北”の大陸間弾道弾は西海岸のサンフランシスコやシアトルに到達する能力はあっても、核兵器として軍事的な信頼性を得るまでにはまだまだ時間がかかる。それよりも重要なのは、“北”の核兵器やミサイルの技術がテロリストに売り渡され、9・11のようにアメリカ国内で使われることだ。これは将来の話ではなく、「今そこにある危機」だ。だから、“北”の崩壊は早ければ早いほどよし、ということになる。

では、日本はどうか。ニュース報道を見聞するかぎり、日本は韓国よりもアメリカ寄りだから、小泉首相は崩壊論を信じているのだろうか? しかし、地政学的には、日本は韓国と同様の問題を抱えている。崩壊前にアメリカとの軍事衝突があれば、日本の米軍基地が攻撃されるかもしれない。“北”が崩壊すれば、多くの難民が日本海を渡ってわが国へ来るかもしれない。“北”のミサイルは、発射から20分で東京上空へ到達するという。つまり、現在の技術力では、“北”からの核攻撃を防ぐ術はない。では、拉致問題を棚上げして“北”への経済援助をするというのか? 世論を含めたこれまでの経緯から考えると、その可能性はゼロに近い。それなら国の防衛はアメリカの軍事力に頼って、日本は経済的に“北”を締め上げる強硬策を採ろうというのか? しかし、経済封鎖は、長い国境線を共有する中国や韓国の同意がなければ、ほとんど効果はないだろう。

こう考えてくると、互いの立場が調整できるなら、6ヵ国協議の場で話がまとまるのが“最善”ということになる。しかし、それはあくまでも「互いの立場の調整」が可能ならばの話だ。そうでなければ、“北”の立場は、6ヵ国協議を先延ばしにして、手持ちの核爆弾の数を増やせば増やすほど有利になる。だから、これから始まるアメリカと韓国の首脳会談で、互いの立場がどこまで調整できるかが注目されているのである。

谷口 雅宣


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投稿: 人気BLOGRANK | 2005年6月11日 15:25

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