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2005年5月15日

二酸化炭素の地下固定

 5月4日の本欄で経済産業省のまとめた「技術戦略マップ」に触れたとき、「原子力発電はすでに長い実績のある技術だが、地下にCO2を貯留する技術は、まったく実績のない技術である」と書いた。これは私の間違いであることが判明したので、ここで訂正させていただきたい。この技術には、昨日(5月14日)の本欄でも言及していて、経産省はこれが2015年に、文部科学省は2025年に実用化するとの予想を紹介した。ところが実際には、一部の油田ではこの技術がすでに使われているというのだ。

 私が先に触れたアメリカの外交専門誌『Foreign Affairs』(Nov/Dec 2004)の記事によると、スウェーデンはCO2の排出1トンにつき50ドルの炭素税を課しているが、その効果もあって、国営石油会社「スタトイル」(Statoil)は北海ガス田の一部で海底深くにCO2を固定する作業を始めているという。

 専門外なので詳しいことはよく分からないが、この技術は、アミンを含んだ化学物質中に天然ガスを通すことで水素とCO2を取り出すと同時に、天然ガスの純度を上げるのだそうだ。これと似た化学反応--「集中的ガス化統合サイクル」(Integrated Gasified Combined Cycle, IGCC)--は、石炭などを燃やす火力発電所に応用できるため、ゼロ・エミッション(廃棄物ゼロ)の火力発電所も夢ではないという。つまり、石炭などを燃やして電気と水素、それにCO2を取り出し、CO2だけを地中深く埋めてしまうというのだ。米エネルギー省は2003年2月に、このゼロ・エミッション火力発電所のプロトタイプの建設を発表している。「フューチャージェン」(FutureGen)と呼ばれ発電容量は275メガワットと小さいが、その後、アメリカ電力社(American Electric Power)は昨年8月、商用のIGCC発電所を2010年までに建設することを発表したという。

 イギリスの科学誌『NewScientist』も4月30日号で、同様のCO2地中固定の動きを伝えている。それによると、CO2を地中に埋めるには、まずそれを圧縮して、使われていない石炭層や古い油田、ガス田、あるいは塩水で満たされた多孔質の岩に、パイプラインを通して注入するという。上記の北海ガス田の場合は、天然ガスからCO2を毎年100万トンも抽出して海底深く埋めているそうだ。また、アルジェリアのサラーのガス田では、昨年からBP社が同様の方法でCO2の地下固定を行っているという。古い油田やガス田は炭化水素を何百万年も安全に貯蔵してきたから、火力発電所から出たCO2も同じように安全に貯蔵できるはずだ、と関係者は考えている。そして、国際エネルギー機関(IEA)の概算によると、世界中にある地下の塩帯水層(salin aquifer)、油田やガス田、炭鉱を使えば、110億トンのCO2を埋めることができるという。

 もちろん、この方法を使えば化石燃料を好きなだけ燃やしてもいいというわけではない。同時にバイオマス、風力や太陽光などの再生可能エネルギーの利用を飛躍的に増やし、IGCCから出た水素を使う燃料電池を軌道に乗せ、省エネの努力をしなければならない。各国は衆知を合わせ、地球規模のエネルギー政策を早急に策定してほしいと思う。

谷口 雅宣

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