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2005年5月17日

GM作物の最近事情

 遺伝子組み換え(GM)作物のことは過去に主として理論的な問題点についていろいろ書いたが、最近は実際に栽培が行われた結果の分析や、調査研究が発表されつつある。私が『今こそ自然から学ぼう』(2002年刊)の中で書いたのは、①除草剤耐性の遺伝子組み換えを行った作物を栽培することは生物多様性を損ない、②やがて除草剤に耐性をもった雑草が出現し当初の効果を帳消しにしてしまう、ということだった。この2つを「環境への悪影響」として捉えれば、もう一つ指摘しておかなければならないのは、GM作物を開発した大企業の独占が進むという「社会への悪影響」である。

 ところで、最近発表された調査や研究結果では、GM作物は当初の思惑通り除草剤の使用を劇的に減少させたばかりでなく、収量も上昇したという。これはアメリカの科学誌『Science』の4月29日号(vol.308, p.688)に掲載された論文で、北京にある研究所の研究員らが害虫耐性をもたせたコメ(GM種)と在来種のコメとの大規模な栽培比較を行ったものだ。比較されたのは、2002~2003年に123の田畑で栽培したGM種2種と224の田畑で栽培した在来種のコメ。その結果、GM種の栽培では農薬の使用を在来種に比べ平均80%削減できたうえ、収量は在来種よりそれぞれ6%と9%向上した。さらに、この農薬使用量の劇的減少により、農民の病気も減少したという。数字で言えば、在来種のコメを栽培した人の8%が具合が悪くなったのに比べ、GM種の栽培では誰も体調を悪くしなかったという。

 これに対し、インドでは同じ害虫耐性をもたせた綿花の栽培結果が論争を巻き起こしている。その一つの原因は、GM種は在来種に比べ、期待していたほど収量が上がらなかったからだ。また、この害虫耐性のライセンスをもつ米モンサント社のGM種よりも、地元で違法に作り出されたGM種の方が、綿花の収量がはるかに多かったことが、大企業の独占の問題を浮き彫りにしている。貧しいインドの農民のことを第一に思えば、モンサント社のGM種ではなく、地元で違法に開発されたGM種の方が収量においてもコストにおいても優れていたということだ。ちなみに、インド中部と南部でのモンサント社のGM綿花の栽培面積は、2002年には5万ヘクタールだったのに対し、2004年にはその10倍に拡大し、インドの綿花栽培面積の20分の1を占めるに至っているという。(『NewScientist』5月7日号)

 ところで日本では、GM種の栽培はどうなっているのだろう。今日(5月17日)の『朝日新聞』は、北海道が全国で初めてGM作物の屋外での栽培を規制する条例を策定し、来年1月から施行することを伝えている。GM作物の栽培審査は、いくつかの法律にもとづき国が行っており、その審査に通った品種(現在約30種)は国内ならどこでも栽培していいことになっている。しかし、北海道では住民や消費者の不安や混乱を避けるために、法律に上乗せする形で知事の許可を条例で定めたということだ。ただし、一般の農家ではなく、研究機関の試験場での栽培は届出だけで済ませるとした。

 国によっていろいろな考え方があることが分かるが、GM作物のこれまでの成績は「1勝1敗」というところか。生物多様性への危険は証明されつつある。真価が問われるのは、長期的影響が明らかになるこれからだ。

谷口 雅宣

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