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2005年5月 6日

SUVは斜陽期に?

 生長の家の全国大会では、現在の石油やガソリンの値段の高さに触れながら“石油ピーク”が近々来るだろうという話をしたが、石油の高騰には善悪両面があるということに気がついてきた。言い換えれば、「石油等の化石燃料から新エネルギーへの移行には、市場メカニズムが重要な役割を果たす」ということだ。つまり、価格が上がれば需要が減り、代替製品の魅力が増すということだ。問題は、その市場の調整メカニズムが、地球温暖化の速度に間に合うかどうかだ。

 石油連盟の渡文明会長は先月13日、ガソリンは「1リットル130円になってもおかしくない」と発言し、さらに、平均的ドライバーの負担増は1ヵ月2000円程度だから、「消費行動にまで影響が出るとは考えられない」と楽観的な予測を示した(『産経』)。ところが、同16日にG7(先進7ヵ国財務省・中央銀行総裁会議)が石油の高騰について「世界経済の成長にとって逆風になっている」との懸念を示し、これまで増産を示してきたロシアの原油生産量の急速な鈍化が『日経』紙上で報じられ(4月23日)るなど、情勢は一向に好転しない。今月3日に採択されたIEA(国際エネルギー機関)の共同声明では、原油市場の透明性を増すこと、エネルギー源の多様化、代替エネルギー開発の必要性などが確認された。

 日米両国はこの“代替エネルギー”とは主として「原発」のことだと考えているらしい。上記したIEAの閣僚理事会に出席した中川経済産業相は、原発のことを「エネルギー安全保障と二酸化炭素削減の観点から、現実的かつ効果的」と指摘し、アメリカのボドマン・エネルギー省長官も「原発を積極的に進めるべきだ」と強調したという(『朝日』5月5日)。しかし、原発をいくら増やしても、石油を原料とした産業の問題は解決しない。同じ日の紙面には、石油化学メーカーがポリ袋の原料であるポリエチレンなどの石油製品を、1~2割値上げする方針を打ち出したことが報じられた。原油の高騰に連動して、ナフサの値段も高騰しているからだ。昨年から数えて5回目の値上げであり、値上げ幅は合計で3割になるという。

 このようにして、ガソリンやポリエチレンなどの石油製品の値段が高くなっていけば、当然それらの消費量は減るだろう。また、代替製品の開発も進む。すでに日本の大手商社各社は、ガソリンや軽油に代わる次世代自動車用燃料(GTL、DME、バイオ・ディーゼル、バイオ・エタノール)の事業化に走り出している(『朝日』4月25日)。
そして、石油に依存した現代の社会構造もゆっくりと変化していくことになる。5月5日の『ヘラルド朝日』紙に、その傾向を示す興味ある記事が載っていた。

 アメリカの消費者が、ガソリンの燃費が悪いSUV(多目的スポーツ車)離れをし始めているというのだ。今年4月の自動車のアメリカでの売り上げを見ると、トヨタと日産が売り上げを伸ばしている反面、GMとフォードは前年より売り上げが減った。GMの減少率は7.7%、フォードは5%減で、いずれもSUVが不調なのだそうだ。これに対して、トヨタは前年比21.3%増で、日産は27%も増えた。この増勢のおかげで、北アメリカ全体での自動車販売は前年より1.8%増えたというから、日本勢の“ひとり勝ち”といったところか。SUVの不調は、GMやフォードだけでなくトヨタにも見られるから、石油高騰によってSUVの全盛期は終るのかもしれない。

谷口 雅宣

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コメント

たしかに石油価格の高騰が市場メカニズムの働きによって新エネルギーへの移行を促す、という側面はあると思います。それこそが、経済学者、とくに個人の自由を重視する自由主義の立場に立つ経済学者によく見られる見解だと思います。

しかし、その一方で、私が危惧するのは、石油産業(あるいは石炭・天然ガスも含めた化石燃料産業)が、政治力に訴えて、市場メカニズムによる新エネルギーへの移行を力づくで阻止し、あくまでも既得権益にしがみつこうとしはしないか-ということなんです。これが余計な心配ならよいのですが…。

投稿: 山中 | 2005年5月 8日 16:34

山中さん、

 「既得権益」の意識は根強いと思います。あとは、業界団体の皆さんの“良心”に希望するしかないような気もします。誠に心もとないのですが……。

 あるいは“倫理的投資家”というのが増えるのは、どうでしょうか?

投稿: 谷口 | 2005年5月 8日 18:11

はい、同感です。

そのためには、やはり“心の開発”といいましょうか、人びとの倫理性が高まること、それと、既得権益に縛られなくても、自由自在に新たな境遇を切り開いていけるだという自信力の養成とが不可欠だと思います。

こうしたことは、政治学や経済学といった学問にはできないことで、心の問題、信念・信仰の問題になってきますから、とどのつまり、やはり真の意味での宗教の役割が重大だということになるのだと思います。

投稿: 山中 | 2005年5月 9日 07:51

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