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2005年5月27日

ブッシュ氏、初めて法案拒否か?

5月25日の本欄で、ES細胞研究に関するブッシュ大統領の姿勢を誉めたが、アメリカ連邦下院は24日、238票対194票で連邦政府の支援できるES細胞研究の範囲を広げる法案を可決した。これまでは、すでに樹立されたES細胞株を使った研究のみを国の援助の対象にしていたが、この法案が法律になれば、新たにつくられる受精卵であっても、遺伝上の両親が廃棄することを決めたものは、それを使ったES細胞研究が国の援助の対象となる。共和党議員50人が大統領に反対してこの法案に賛成票を投じたが、それでも「238票」は大統領の拒否権をくつがえせる議会総員の「三分の二」には至らなかった。したがって大統領が拒否権を発動すれば、この法案は成立しないことになるだろう。

不妊治療で受精卵を作成する場合、1回に1個だけでなく5~6個の受精卵を作成しておくのが普通だ。したがって、最初の1~2個の受精卵が着床に成功し、無事赤ちゃんが生まれた場合は、残りの受精卵は“余分”となる可能性が出てくる。日本ではこれを“余剰胚”と呼んでいて、これを使ったES細胞の研究は認められている。しかしブッシュ氏は、上述した下院での投票が行われる直前に人々を集め、この“余剰胚”を他のカップルに寄付することで誕生した子供を紹介して、これまでに81人が同様の方法で誕生しているのだから、「余剰胚(spare embryo)などというものは存在しない」と宣言したという。

この法案は次に上院の審議にかけられることになるが、日程はまだ決まっていないようだ。上院でも可決が予想されているが、そうなると、ブッシュ大統領は就任以来初めて、議会で成立した法案に対する拒否権を発動することになるだろう。『ニューヨーク・タイムズ』は27日の紙面で、そういうブッシュ氏の考えを揶揄した「ブッシュの幹細胞神学」という社説を書いているが、そのポイントは「多様な考え方を許すこの社会で、一つの宗教的信念を押し通そうとするのは間違っている」ということだ。しかし、部外者から言わせてもらえば、そういう宗教的信念をブッシュ氏がもっていることを十分承知で、アメリカ国民は彼を選んだはずだし、それによってアフガニスタンやイラクでの戦争も起こったのだから、今回も甘んじて彼の姿勢についていくことになるのではないか。もっとも『タイムズ』はケリー支持で、イラク戦争にも反対だから、今度もブッシュ氏に反対しているのだろう。その点では一貫している。

ところで私は、イラク戦争反対だったが、受精卵を使ったES細胞の研究にも反対である。クローン胚や胚性幹細胞ではなく、血液や皮膚や脂肪中にある体性幹細胞の研究を大いに進めてもらいたいと考えている。

谷口 雅宣

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