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2005年4月13日

失敗と成功

“花金”と言えば「花の金曜日」だが、木曜日が休日の私は“花水”だ。ということで、レオナルド・デカプリオ主演の『アビエイター』を見ることにした。

午後7時開演に間に合うように夕食をすませるつもりで、妻と二人で家を出た。目指すは、映画館のある六本木ヒルズ。ところが、席を確保するために事前に映画館のチケット売場へ行くと、前の会は5時開演で、次の開演は午後8時20分だという。出発前に家から映画館に電話をかけて確認した時間と、大いに違っていた。抗議しようと思ったが、今さらどうにもならない。最終回の8時20分まで待つのはシンドイし、どうしても見たい映画でもなかった。また、「いつでも見れる」と思ったので、悪アガキはやめてスッパリと諦めた。

では、ゆっくりと夕食を……と思って、周囲を歩き回って安めの和食屋へ入った。1時間半ほどたってその店を出て、地下鉄日比谷線の駅近くの本屋へ寄った。時間に余裕のあるときには、我々はよく本屋へ入る。そして、思い思いの棚の前へ行って物色する。だが今日は、私は店の中へすぐには入らず、店先の路上の棚でセールをしていた洋書の前で立ち止まった。「掘り出し物があるかもしれない」と思ったのだ。

この種の路上セールに出される洋書は、流行作家の小説や、英文科の女学生好みの作家の本や旅行書が多い。しかし、場所が六本木だから、ネイティブ・スピーカー用の普通の本もあるかもしれない……などと思いながら、何の気なしに1冊を棚から抜き取った。本当に「何の気なしに」で、背表紙の文字もロクに読まなかった。その本を手に持ちながら、しかし私の目は近くの別の本の表紙に書かれた「SILENT SPRING」というタイトルを読んだ。どこかで聞いたことがある。著者名を見ると「Rachel Carson」とある。そうだ、レイチェル・カーソンの名著『沈黙の春』だった。思わず手に取ってみたが、この本の和訳本の文庫版はもう買って家にある。いくらセールとはいえ、2冊ある必要はないと考え、棚にもどした。

もう一方の手に持っていた本を、私はその時改めて見た。著者の「ROSENBERG」という名前が、記憶に引っかかった。知っている名前だと思ったが、誰なのか思い出せない。タイトルは「the transformed cell」とある。副題は「unlocking the mysteries of cancer」だ。著者は「MD」であり「PHD」であり、癌(cancer)に関する本である。ここまで読んで、私は思い出した。記憶とは不思議なもので、一端をつかむと、それに引かれてズルズルと残りが出てくる長い紐のようだ。癌の免疫療法をアメリカで行っている医師のことを、もう何年も前にABCニュースで見た。その医師の、白髪混じりの短髪とアゴ鬚までも目の裏に浮かんできた。その人の名前が確か「ROSENBERG」なのだった。立ち読みで「まえがき」を読み、確信を得たので買うことにした。セール本の売値はどれも500円だから、私にとっては確かに“掘り出し物”だった。

このローゼンバーグ博士の弟子として働いていた日本人医師が帰国し、癌の免疫療法をしていることを、私はかつて生長の家の講習会で話していたことがある。患者自身の免疫系にあるNK細胞を血液から取り出し、試験管内で大量に増殖させ、それを再び体内にもどして癌細胞と戦わせる--こういう治療法である。人間には本来、癌を治す力があるということを、医学的にこれだけ有力に立証するものはない。そう思って紹介していた。だから、懐かしい気持でこの本を手に持ち、帰途についた。

私は、本とのこういう“予期せぬ出会い”を大切にしている。「本が自分を招ぶ」と言えば迷信臭いかもしれないが、「人間は意識せずに必要な本を見つける能力をもっている」と感じるような出会いを、私は過去に何回も経験している。多分これは「親和の法則」の一部だろう。そのおかげで、お目当ての映画の時間を間違えたという“失敗”も、見事に“成功”に変わってしまった。

谷口 雅宣

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コメント

本との“思わぬ出会い”というのは、私も時々経験します。

私の場合は、ある本を目当てに本屋さんに 行ったところ、そのお目当てはなかった…という“失敗”のあとに、それでも何気なく書棚を見ていたら思わぬ掘り出し物に出くわすという“成功”に早変わり--というパターンが多いです。「こんな本が出ていたのか!シメシメ…^^」という感じでしょうか(笑)

そんなときにいつも思うのは、まさに「本が自分を呼んでくれたのでは…」ということなんです。あまりにもフッと目に飛び込んでくるものですから…(笑)

投稿: 山中 | 2005年5月 9日 08:09

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受信: 2005年5月 8日 19:01

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