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2005年4月 7日

胴長のインク瓶

休日の今日は、珍しいことをした。インク瓶を買ったのである。高校時代以来のことだ。

朝、別の用事で妻と2人で新宿の伊勢丹デパートへ行った。買い物をひとつ終り、エスカレーターで階下へ降りた所で万年筆売場があるのに気がついて、私はハッとした。実は、家を出る前に、洗面台の横に置いてあったモンブラン社製の万年筆を胸の内ポケットに滑り込ませたのだ。インクがなくなっていたので、デパートに行くなら、何かのついでに補給できるかもしれないと思ったからだ。

モ社のロゴマークを目当てに担当嬢を探し、その前へ行って「インクが切れちゃったんですが……」と言った。
「色は何色でしょう?」
 と訊かれて、ハタと困った。自信がないのである。
 私はものを書くときは、ほとんどパソコンですませる。だから万年筆は普段使わない。今回インクがなくなった万年筆は、半年ほど前に人からもらったもので、それ以降ずっと使わなかったのを、最近になって“画材”として使ってみる気になった。すると、中のインクが固まりかかって出が悪く、濃縮されて紙の上に出る。それが、もともとはブルーブラックだったのか、それとも普通の黒インクだったのか、即座に判断ができなかった。

結局、担当嬢に3種類のインクで紙に波形を書いてもらい、その色を比べ、最後に、描線の上を濡れた指を滑らせて、にじみ具合を見て判断した。選んだのは黒だった。この万年筆をもらった直後に、それを使って周辺のものを2~3枚スケッチしたが、その際、水を含ませた筆で描線をぼかした。そのにじみ具合や色を憶えていたから、迷わずに選べた。このインクは、普通に使えば紙の表面に「黒」しか出さないが、水でにじませると青っぽくも、赤っぽくもなる。

インク瓶は四角い漆黒の箱に入っていた。家に帰ってから箱を開け、瓶を取り出してみると、それは不思議な形をしていた。何か両腕を地面に突いて踏ん張った動物のようだ。それも、ダックスフントのように何となく愛嬌がある。パソコン用のインクジェット・プリンターのインク入れには、こんな形のものはない。機能と効率重視の考えからは、こんな“遊び”のあるデザインは生まれてこないだろう。

気に入ってしまった私は、机の引出しの奥をかき回して古い原稿用紙を探し出し、買ってきたインク瓶のインクを使って、この文章を書き始めた。

谷口 雅宣
InkBottle

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コメント

 再度、投稿させて頂きます。これは送信ボタンをクリックすれば即座にアップされるのですね。でも、これだと何でも書けてしまうのでちょっと危険ではないでしょうか?でも、これがブログというものなのでしょうね。
 ちなみにブログ(blog)というのを辞書で調べても載っていませんでした。

 ところで先生の絵は本当に素晴らしいですね。私も一応、昔は美術部だったので油絵、アクリル画等書いていましたが、私は先生の様な風情のある水彩画はとても描けません。とにかく写実的にリアルに描くことばかり考えてしまいますので。

投稿: 堀 浩二 | 2005年4月 8日 09:05

堀 さん、

 私の絵ですか? そんなお褒めいただくような代物ではありません。あれはむしろ“失敗作”に近いと感じながら、恐る恐るアップしました。(笑)

投稿: 谷口 | 2005年4月 8日 12:52

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