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2005年4月20日

中国経済の矛盾

 中国が反日デモの抑制に本腰になってきたことは朗報である。中国政府の中にも“良識派”がいることの証だろうが、いろいろな意味で、中国の抱える矛盾がこれによって露呈してきたとも言える。中国の日本不理解や国際常識の欠如の問題はさておいて、経済的側面について考えてみよう。

 中国は一応、社会主義なのであるが、資本主義と自由主義経済の制度を相当取り込んでいる。このこと自体が矛盾であるから、“歪み”が出ることは仕方がないだろう。今回、反日デモが起こった上海、天津、広州などの都市は、現代中国経済の言わば“火の玉”である。4月20日に中国国家統計局が発表した今年1~3月期のGDPの実質成長率は、前年同期比で実に「9.5%」である。政府の今年の生長目標が8%であることを考えると、“燃えすぎ”といえる。固定資産投資は22.8%増、うち不動産投資は26.7%増、海外からの対中投資は9.5%増、個人消費の伸びを示す社会消費小売総額は13.7%増、消費物価上昇率は2.8%増という。(21日付『産経』)

 これだけの勢いで経済成長が進んでいれば、中国人労働者はその“果実”を享受していると普通は考える。もちろん、一部のエリートはその通りであるが、中国人全体は必ずしもそうは言えないようだ。20付の『ヘラルド朝日』紙によると、この経済発展の基地となっている中国南東部では、実に200万人分の労働力が不足しているというのだ。それならどんどん雇えばいいじゃないか、と普通は思う。が、経営側は「誰でも雇う」わけではない。特に、海外から進出してきている企業にとって「マネージャー」や「熟練労働者」は“金の卵”だが、このエリート達はすぐに給料の高い他の企業へ行ってしまう。中国南部の労働者が同一の仕事についている期間は、平均して2.1年という。ならば、普通の労働者はできるだけ安い給料で、厳しい条件下で雇うことになる--若くて、移動性があり、長時間労働をし、家族と離れて働ける人々……というわけだ。

 こういうことを考えれば、中国で貧富の差が拡大しつつあることの理由が分かる。労働者間の平等を重視する“社会主義国”が、こういう状態だ。また、“社会主義国”であるがゆえの、余分のコストもかかるらしい。それは労働者の給料に見合った「社会的費用」で、社会保険税、医療税、住宅預金等を指す。これらを総合すると給与額の40~50%に当るというが、これを企業側が支払わねばならない。だから、「人件費が安い中国」という伝説は、少なくとも中国東南部の諸都市においてはしだいに失われつつある。先週、広東州の新聞が報じたニュースでは、ある出版社では維持管理要員を雇わねばならないというので、年収1万8千ドル(約210万円)を提示したという。この額は、博士号をもつプロの年収の何倍にもなるらしい。

 というわけで、一部の中国人--とりわけ経済発展の目覚しい南東部の都市周辺の中国人の間に、不満が高まることは十分考えられる。その不満が、「愛国無罪」の標語とともに日本の政府機関や企業に捌け口を求めたと考えることは、あながち不合理ではないだろう。もちろん破壊活動は、それによって正当化できるものではない。が、政府に都合のいいように教育された多数の労働者を抱える中国に、わざわざ“生贄の羊”を与えるような外交政策が賢明と言えないことは明白だ。

谷口 雅宣

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