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2005年4月10日

「石油後」を考えよう

 石川県・金沢市の生長の家講習会で「石油ピーク説」を紹介し、日本などの先進国がエネルギーのムダ遣いを続けていれば途上国に犠牲者が増えるだけでなく、国際紛争を激化させることになると話した。帰途の羽田行きの飛行機内で読んだ新聞には、石油の値段が現在値よりもさらに高いレベルになることが恒常化するだろう、と書かれていた。金沢市内のスタンドでは、ガソリンの値段は1リットル120円弱だった。これがどの程度に“高止まり”するかは、我々一般市民にとっても重大な関心事だろう。

 石油の高騰は単なる個人の予測ではなく、IMF(国際通貨基金)という国際機関の分析だから傾聴に値する。IMFは先週木曜日、年2回発行する世界経済情勢の分析で、石油は2030年には1バレル39~56ドルの値段になると予測し、これにインフレ要素などを加味して現在の値段に置き換えると、1バレル当り67~96ドルに該当すると発表した。先週、ゴールドマン・サックス社が出した予測では、石油の値段は1バレル100ドルを超える高騰を示す前段階にあるとしたが、IMFはその可能性を否定しなかった。

 なぜ石油の値段が上がるかの理由については、大方の見解は一致している。「需要サイド」の要因は、中国やインドなど好調な経済発展を続ける国々のエネルギーや資源需要がこれからも長期的に続くからだ。「供給サイド」の要因は、産油国の生産体制(とりわけ精製能力)が需要に応え切れない状態にあることだ。しかし、ここで語られていないことが2つある。1つはイラクの石油生産能力のことであり、もう1つは「石油ピーク説」だ。イラクの政治が安定し、石油生産がイラク戦争以前の状態に回復すれば当然、供給側の条件は緩和する。IMFの予測の中には当然、これが加味されているのだろうが、それでも石油は高騰すると考えているようだ。

 「石油ピーク説」とは、石油生産量はピークに達するという考え方だ。これは、すべての鉱物資源には、掘っても掘っても前年より生産量が上がらないという「生産ピーク」が来るとの経験則を、石油に当てはめたものだ。現在の大方の予想は、石油の生産ピークが来るのは「2010~20年」ということになっているが、この予測範囲の最も早い時期は「あと5年」である。あと5年で石油の生産量が頭打ちになれば当然、価格は高騰するだろう。中国やインドの経済発展が、この先5年で終ってしまうことなど考えられないからだ。とすると、IMFもゴールドマン・サックスも、「石油ピーク」を織り込んだ予測をしているのだろうか?

 ならば、いっそのこと「世界経済は石油生産のピーク段階に近づいた」と宣言したらどうか、と私は思う。そうすれば、先進国の人間はもっと危機感をもって、エネルギーの節約を考えるのではないか。石油の代替エネルギーの利用に、もっと真剣に取り組むようになるのではないか。世界経済や国際政治が混乱することを恐れているのかもしれないが、来るものはいずれ来るのだから、できるだけ多くの人に早い時期から「石油後」の心の準備をさせておくことは為政者の責任だと私は考えるのだが……。

谷口 雅宣

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