石油高でG7対策なし
今朝の新聞各紙は、ワシントンで開かれていたG7の共同声明を一斉に報道した。が、共同声明の内容に新しいものは何もないから、取り扱いはバラバラだった。私は本欄で「石油高騰」の話に焦点を合わせて書いているので、それに関することだけを言えば、「これに対する策は当面ない」ということのようだ。
『日経』は1面で「原油価格の高騰が世界経済の減速を招くリスクに懸念を表明」と書き、4面の分析記事では、今年4月にロンドンで行われたG7との違いについて、「これまでは価格上昇は一時的との楽観論が優勢だった。だが最近のニューヨーク市場で一時1バレル60ドルに迫るなど価格の騰勢が強まり、需要急増に供給が追いつかない状況が続くとの観測が広がっている」と書いている。『朝日』はその背景について「原油高の根っこにあるのは、中国などの需要急増で供給が追いつかなくなることへの懸念」があるとし、さらに「投機資金」の動きが原油高に拍車をかけているとの見方を報じている。これが、今回の声明が「石油市場のデータの改善」を求めている理由だろう。谷垣財務相の言葉によると「原油市場の情報を明らかにしていくことが、無用な投機などを防ぐことになる」(朝日)というわけだ。
しかし、産油国にとっては、正確な石油の埋蔵量に関する情報は“国家機密”とされるという点が事態を難しくしている。共同通信は、なぜ産油国側が増産しないかの理由を「1980年代に生産能力を増強した結果、価格低迷に苦しんだ産油国は設備投資に慎重だ」と分析している。が、増産しない理由は、価格低下の懸念だけだろうか? 増産しようと思っても、埋蔵量にそれほど余裕がないのではないか? と、つい思いたくなる。「石油ピーク説」がありそうなものだと考える私としては、産油国が互いにポーカーをしているように感じるのは行きすぎだろうか。
とにかく、石油の大量消費国である日本は、このままの状態でいいはずがない。そのことは政府も十分気づいているようで、4月15日に行われた総合エネルギー対策推進閣僚会議でも、石油代替エネルギーの供給目標計画に変更が加えられた。が、変更の幅が微々たるものだったのが残念だ。つまり、平成22年度の目標として、原子力は28.1%だったのを27.6%とし、石炭は34.4%から32.1%に減らし、逆に水力を6.0%から6.7%とし、風力等の新エネルギーを6.0%から7.6%に引き上げた。16日付の『産経』によると、小泉首相は会議の席上、太陽光、燃料電池、風力、バイオマスなどの「代替エネルギーに大いに力を入れて、石油依存度の低い国に」と指示したそうだが、掛け声の割には新エネルギーの目標値は低いと思う。温室効果ガスを生み出す石炭をもっと減らし、新エネルギーはせめて二桁台の目標値を設定してほしかった。
谷口 雅宣
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