« 軍隊も環境を重視? | トップページ | カラスの仕業? »

2005年4月 2日

戦争の原因は“迷妄”なり

戦争の原因は“迷妄”であるということが、ますます明らかになった。

ブッシュ大統領が設置した超党派の独立調査委員会が最近出した報告書が、そのことを有力に物語っているようだ。簡単に言えば、今回のアメリカによるイラク侵攻は「核兵器を含む大量破壊兵器をもち、テロリストを支援する独裁政権を倒すため」という正当化がなされたが、「大量破壊兵器」の存在も「テロリスト支援」も事実ではなかったのである。しかし、諜報機関上層部とブッシュ大統領の側近は、この正当化の理由に合わせて都合のいい情報を信じ、都合の悪い情報を排除した。そして結局、自分たちの“迷妄”に当てはまった事実の断片を組み上げて「悪人サダムの脅威」を造り上げ、それに向かって攻撃をしかけたのである。この迷妄の構築に大統領自身が関与していたかいなかったかが問題になったが、今回の報告書では「この誤った情報分析に、ホワイトハウスあるいは国防省が関与した証拠は見つからなかった」としている。

「証拠は見つからなかった」とは便利な言葉である。証拠が残らないように指示すれば、無罪放免ということになるからである。しかし、チェイニー副大統領が慎重派のパウエル国務長官と対立し、CIAの情報を無視してサダム攻撃の口実を探し回ったことは事実であり、数多くのレポートがすでに出されている。

例えば『ニューヨーク・タイムズ』は昨年10月の初旬、次のような記事を掲載した--

チェイニー副大統領を初めとする大統領側近は、2002年のイラク侵攻前の重要な時期にメディアのインタビューを受けて、イラク大統領が核兵器を開発中だという「否定できない証拠をもっている」と述べた。これは高強度のアルミニウム筒のことで、何千本ものこの筒がイラクにある秘密の遠心分離装置に運び込まれ、その一部を入手したと発表した。これが、イラクが大量破壊兵器をもっている、あるいは開発中だという唯一の物証だった。当時、国家安全保障補佐官だったライス氏は、この筒についてCNNニュース(2002年9月)の中で「これは核兵器の開発にしか適していない」と述べ、「我々はキノコ雲を見てから、そのことに気づきたくはない」と言った。

しかし、CIAに所属する4人の職員によると、ライス氏の部下たちは、このほとんど1年前に、この筒についてすでに政府の核専門家の意見を聞いており、それはこの筒が「核兵器開発に使われることは極めて疑わしい」という内容だった。これらの専門家の意見では、この筒は小型の砲兵用ロケット発射装置に違いないということだった。が、ブッシュ側近は、これが核兵器用だとする意見を採用した。そして、反対の見解があることを大統領には伝えなかった。彼らは個人的には「核兵器用」だとする理由は弱いとの見解を表明していたが、公の場では、確信をもってそう主張した。

--まぁ、これは報道のごく一部だが、このようにして一連の“物証”あるいは“状況証拠”が作り出され、政権上層部の信じるような「悪人サダムの脅威」が構築されていったのであろう。「人間は信じるものしか見ない」とはよく言われることだが、世界最大最強の国にしてこのような状態であることは、決して喜ばしいことではあるまい。なぜなら、このイラク侵攻によって何千人ものイラク人が死に、アメリカ兵も1500人以上が死に、イラク経済は破壊され、貧困は拡大し、アルカイダは未だに活動をしているからだ。小泉首相の見解を、ぜひ聞きたい。

谷口 雅宣

|

« 軍隊も環境を重視? | トップページ | カラスの仕業? »

コメント

倉山太一 様:

>>いずれアメリカも、かの宗教団体のように、国としての瀬戸際に立たされる時が来るのでしょうか・・・。その時の日本を考えますと、益々不安です。<<

 アメリカは“幅のある国”だと思います。ある一人の指導者に盲従するようなことはないし、共和党に対する民主党も健全です。私は、かの国は今回、きちんと学習したと考えたいです。

投稿: 谷口 | 2005年4月 3日 12:06

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 戦争の原因は“迷妄”なり:

« 軍隊も環境を重視? | トップページ | カラスの仕業? »