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2005年4月25日

技術の落し穴 (2)

現代文明は人間に便利さを提供したというが、「本当だろうか」と疑いたくなることがある。私は若いころ「便利は善なり」という単純な楽観主義にあまり疑問を感じなかったが、最近はしばしば「便利に裏あり」と考えるようになった。便利さをもたらす技術の裏にある、人間の「動機」について思いをめぐらせるようになったからだ。ある技術が、善悪両面の目的に利用できることはしばしば指摘されていることだが、それでも技術開発をやめろとか、ある種の技術は開発を諦めよう、などという話にはなりそうもない。

ウイルスバースターの被害は凄まじかった。この凄まじさの大きな原因は、ネットへの「常時接続」という極めて便利な技術のおかげである。個人のADSLの利用や企業内のLAN経由のネット接続が大々的に展開されていたから、ウイルス・パターンファイルの「自動更新」という考え方が生まれたのだ。私は、いまだに不便な「ダイヤルアップ」の接続方法を利用しているから、ウイルスバスターを使っていても今回の被害には逢わなかった。ダイヤルアップで自動更新を選択すると、接続時にパソコンの反応がいやになるほど遅くなる。だから、自動更新の機能は使わず、自分で決めた時に手動でパタンファイルの更新を行っている。

私が常時接続を使わない理由は、ウイルス感染の危険が増大するからだ。ウイルスだけでなく、ネット上の“なり代わり”の被害に逢う確率も常時接続により増大する。私は、このダイヤルアップによるネット利用であっても、すでに何回もウイルスの被害に逢っているから、ネット業者の「便利さ」の売り込みにも簡単に乗らなかった。もう一つ「怪しい」と思っているものが、無線によるネット接続である。これは、いつでもどこでもネットにつなげるから、善人だけが存在する社会ならば、これほど便利な方法はない。が、ご存知の通り、無線は常に“盗聴”の危険を伴う。今日の“ネット販売”(またまた便利な方法)の隆昌を考えると、この“盗聴”とは、ネット上の“なり代わり”だけでなく、クレジットカードや銀行の預金情報の略取に直結する。

ダイアナ妃の例を出すまでもなく、携帯電話の盗聴はすでに数多く行われてきたが、この分野でも、技術の便利さは悪用による不便さによって食いつぶされそうだ。現在、ケータイでは盗聴を防ぐために「暗号化」の技術が使われているが、ここでも悪用者による「解読」とメーカー側の「暗号の強力化」のイタチごっこが続いている。25日付の『ヘラルド朝日』紙の伝えるところでは、これまでの携帯電話による会話の暗号化は、暗号カードや暗号チップのような機械(ハードウエア)によるものが主流だったが、先月、スロバキアの会社が発表した暗号化はソフトウエアによるものという。

しかし、この電話の盗聴に関しては、もう一段、複雑な問題がある。それは、犯罪防止と取締等の目的で、警察による盗聴は世界各国で合法化されているということだ。つまり、あまり完璧な暗号化の技術は、それが“悪”なる目的に使われた場合は、社会にとって有害になるからだ。技術というものは、かくも節操のない存在である。状況如何によって、善になびいたり、悪になびいたり……。

谷口 雅宣

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コメント

なるほど…。たしかに「自動更新」や「常時接続」には、危険も大いにありますね…。

私の場合は、ADSLにしてしまっていますが(苦笑)、必要なとき以外は、接続しないようにしようと思います。

また、私の使っているウィルス対策ソフトは、ウィルスバスターではなく、シマンテックの「ノートン アンチウィルス」ですが、とりあえず、自動更新はオフに設定しなおしました。手動での更新を結構まめに行なっているので、それでも不便はしないと思います。

ただ、この「自動更新」をオフに設定したところ、「注意が必要です」というメッセージが出るようになりましたが…まぁ、気にしないことにします(笑)。あまり機械任せにしすぎると、それこそ「技術の落とし穴」に陥るかもしれませんので。

投稿: 山中 | 2005年5月 4日 12:06

山中さん、

 自動更新をオフにしたそうで……。私の問題は「更新不精」です。週1回ぐらいは……と思うのですが、結局、月1回になったりします。

投稿: 谷口 | 2005年5月 5日 18:26

私の場合、ADSLにしているので、その分、自然と用心深くなっているのだと思います。パソコンの電源をONにするたびに、まずウィルス定義ファイルの更新をかけないと、そのあとインターネットに接続する気になれないんです、恐くて恐くて…。

たとえて言うと、海外旅行に行ったときに、見知らぬ町を初めて歩くときのような心境になる-という感じです。インターネットというのは、目には見えませんが、実に広大な世界に一人で航海に出るようなものだと思いまして…。

投稿: 山中 | 2005年5月 9日 08:00

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